地の文に何を書けばいいのか。それは大きく分けるとこの3つになります。
地の文に書くものは結局この3つしかありません。
この3つのバランスが悪いと、ちゃんとした地の文にはなりません。地の文に慣れていない人は書くべきものをうまく分類できず、全部が頭の中でごっちゃになっています。一度頭の中を整理しておきましょう。
「アクション」はその呼び名のとおり、動きです。登場人物の動作を書いていきます。
太郎は走った。
太郎は驚いた。
太郎は急いで外へ飛び出した。
「様子」はまわりの状況のこと。どんな状況なのか、どんな様相なのか。それを書いていきます。
ドアが閉じようとしていた。
町はお祭りでにぎわっている。
花子がこっちへやってくる。
「心理描写」は主人公の感情です。主人公は何を思ったか、どう感じているのか。そのこころ模様を書いていきます。
今ならまだ間に合うはずだ。
このチャンスは絶対に逃したくない。
花子の言ったことはたぶん嘘だろう。
地の文は「アクション」「様子」「心理描写」この3つを混ぜながら書いていきます。地の文が苦手な人はアクションばかり書いていたり、様子ばかりを書いていたり、バランスが悪い。
3つをうまく組み合わせていきましょう。次の例文には「アクション」「様子」「心理描写」が3つとも入っています。
ドアが閉じようとしている。太郎は急いで外へ飛び出した。今ならまだ間に合うはず。足を止めずそのまま走っていった。町はお祭りでにぎわっている。このチャンスを逃したくない。
ドアが閉じようとしている。(様子)
太郎は急いで外へ飛び出した。(アクション)
今ならまだ間に合うはず。(心理描写)
足を止めずそのまま走っていった。(アクション)
町はお祭りでにぎわっている。(様子)
このチャンスを逃したくない。(心理描写)
地の文に慣れていないとバランスの悪い文章を書いてしまいます。次の例文などがそういう失敗例の典型。
太郎は靴をはいた。ドアを開けた。急いで外へ飛び出す。全速力で走っていく。一度足を止め周囲を確認する。もう一度走り出す。
アクションだけが連続で続く文章です。どんな場面なのかわかりにくいですよね。
アクションばかり書いて失敗しているので「様子」あるいは「心理描写」を足していくようにしましょう。そうすればちゃんとした地の文になります。
「町はお祭りでにぎわっている」こうした様子に関する文を1個でも入れておくと全然違います。
「今ならまだ間に合うはず」みたいな心理描写を入れてもいいです。主人公の思っていることを書いておくと、シーンの意味が伝わりやすくなります。
アクションだけ連続させて疾走感を出すという演出法はあります。でも慣れていない人がやると状況がつかみづらい文章になるだけ。むずかしい演出法の前にまず基本をしっかり学びましょう。
書くことは結局この3つしかありません。あとはこの応用と考えてください。
5種類とか10種類など細かく分類しすぎると、地の文の感覚がつかめなくなります。小説を書くことって学校の勉強とは全然違います。地の文の書き方を知識としておぼえるのではなく、感覚としてつかみたい。
分類しすぎると逆にひとつも書けなくなります。
たとえば薬を購入するとき、軽い痛み用と、激痛のとき用と、普段の予防用と、3種類ぐらいで販売されていたらその中から自分に合いそうなものをちゃんと選べます。
でも10種類とかに細かく分類されすぎていると、どれを買えばいいかわからなくなるんですね。ズキズキ痛いとき用があって、鈍痛用もあって、断続的な痛み用もあり、何がどう違うのかもうサッパリわからない。
もう考えるのも面倒になってきます。
同じように、地の文も細かく分けすぎると何もつかめなくなります。
次の例文は浮気を疑われるシーンです。太郎は言い訳をしたあと肩をすくめます。これにもっと地の文を足そうと思ったとき、どんな文を足せばいいかわかるでしょうか。
「忙しかったんだ」
太郎は肩をすくめた。
「もしかして誰か一緒にいたの?」
「なんだよ、オレを疑ってるのか」
浮気を疑われ、忙しかったと言い訳し、太郎は肩をすくめます。地の文の種類を細かく分類しすぎていると、何が足りないのかが見えてこなくなります。
3種類という最小単位でおぼえておけば、足りない文はすぐにわかります。太郎は肩をすくめるというアクションをとりました。足りないならあとは「様子」とか「心理描写」を入れておけばいいんです。
「忙しかったんだ」
太郎は肩をすくめた。(アクション)
花子が疑わしげな目をこっちに向けてくる。(様子)
弱気になってはダメだ。強気の姿勢をつらぬいた方がいいだろう。(心理描写)
「もしかして誰か一緒にいたの?」
「なんだよ、オレを疑ってるのか」
地の文に慣れていない人は何を書けばいいのかがわからず、文章の量自体が足りていないことがほとんどです。書きすぎてしまって削らないといけないようなケースはあまりないんですね。たいてい量が足らない。でも本人は何が書けていないのかがわからない。そうしたケースが大半。
書くことは3つしかありません。「アクション」しか書いていないなら「様子」や「心理描写」を書き加えればいいんです。書かれていないものを足すようにしましょう。慣れないうちはそういう単純な対処の仕方でいいです。
地の文に慣れてくると感覚が身についてきて、書くべきものが見えるようになります。
書くことは結局3つしかないんです。
「浮気がバレそうで太郎はあせった」みたいな説明文を書くのではなく、それを「アクション」「様子」「心理描写」の3つを使って書く。それが小説です。説明文ではなく描写を書くのが小説。描写の方が強い実感を生み出せます。
そして描写というのは「アクション」「様子」「心理描写」この3つで書けてしまいます。この3つ以外のものを書こうとするとそれは説明文になってしまう。
シーンによっては説明文っぽいものを書くときもあるけど、それは応用だと考えてください。
基本的には描写しか書かないようにする。それ以外は応用と考える。
この基本と応用。
地の文の書き方をそうやってとらえておけば、ちゃんとした文章が書けるようになります。
地の文をもっと細かく10種類などに分類した方が学術的ではあります。正解不正解でいえば10種類の方が正解なのでしょう。しかし地の文について学ぼうと思っている人は、テスト用紙に答えが書けるようになりたいワケではないはず。
地の文には何を書かないといけないのか。どう書けばいいのか。慣れていない人にはわかりにくいものです。でも書くことは3つしかないと考えれば、そのわかりにくいものを感覚的にうまくとらえることが出来ます。
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