面白いストーリーの作り方

面白いとは? 物語の面白さとは結局のところ何か

目次

「面白いストーリーを作りたい。でも結局のところ面白いって何? 観客はその作品のいったい何を面白いと感じているの?」

こうした疑問をみんな一度は持ちます。ちゃんと学んで答えを得ることができればレベルアップしていくし、曖昧なまま済ませてしまうともう能力は頭打ち。伸びません。

だから面白さの正体だけは絶対押さえておきましょう。一番大事な基本です。

面白さの正体は非常に単純です。そのストーリーから感じる心地よさです。これによって観客はいい気分を味わい、満足感を得ます。

物語の面白さの正体というのは心地よさです。

ではこの心地よさとはいったい何か?

望んだとおりのことが起こると心地よさを感じる

観客は何によって心地よさを感じているのか?

この答えも非常に単純です。望んだとおりの展開になるからです。見たかったものがちゃんと出てくるからいい気分になります。

つまり「こんな悪い奴らは成敗されればいいのに」そう思いながら見ていたら、正義の味方が登場して悪をこてんぱんにやっつける。これで観客は見たかったものが見れて気持ちがスッキリします。

「こうなって欲しい」という観客の願いがちゃんと達成されるストーリー。それが面白いストーリーです。

子供が戦隊ヒーローを毎週見るのは正義が悪を倒すからです。

おじいちゃんが毎週『水戸黄門』を見るのも悪代官が水戸黄門によって成敗されるからです。

観客は本能的に悪者に恐怖を抱きます。「こんなやつらがのさばる世の中になっては大変だ」と。悪代官が私利私欲のために農民を苦しめる様子を見せられると、「誰かこいつらを成敗してくれ」と願わずにはおれません。

そこに水戸黄門が登場して悪を成敗。観客にとってはまさに自分が見たかった光景です。こうなって欲しいと願っていた通りのことが起こるので「やったぜ黄門さま!」と心地よい爽快感が得られます。

観客の考える望ましい結末になるからこそ「面白かった」と言ってもらえます。もし水戸黄門がモタモタして悪代官に負けてしまったら、『水戸黄門』を見る人は来週から誰もいなくなります。

なぜつまらないストーリーになってしまうのか

観客の望んでいることがちゃんと起きる。それが面白いストーリーの正体です。

非常に単純です。

悪い奴が成敗される話だから面白いと感じます。

いじめられていたシンデレラが王子さまと結ばれるから面白いと感じます。

怠けたうさぎが負けて、遅いはずの亀が勝つから面白いと感じます。

母をたずねて旅した少年がちゃんと母親と再会を果たすから面白いと感じます。

赤穂浪士が最後は主君のかたきを討つから面白いと感じます。

「なんだ簡単だな。観客が望むよう主人公を活躍させてハッピーエンドにすればいいのか」そんなふうに思ってしまいそうなほど単純です。しかし単純と簡単は違います。ここは間違えやすいポイントなので注意してください。

短絡的に考えると必ず落とし穴にハマります。

たとえば「簡単じゃないか。主人公が大活躍すればいいだけだろ。ハッピーエンドにすれば観客は喜ぶんだろ」と勘違いしてしまうと次のような駄作ストーリーを作ってしまいます。

サッカー部に所属する主人公が「今日の試合は絶対勝つぞ」と意気込む。

競技場に到着。

試合ではいつもどおりのプレーができて5-0で大勝利。めでたしめでたし。

このような退屈なストーリーを作ってしまいます。こんな映画を見せられたら「金返せ」とがっかりしますよね。

つまらないストーリーのお手本のような映画です。

なぜ失敗しているのかを説明する前に、別の失敗例も見ておきましょう。

サッカー部に所属する主人公は怪我をしてしまった。治るまで1ヶ月ぐらいかかるらしい。

1ヶ月のあいだ病院に通う。

1ヶ月後ケガが治りました。めでたしめでたし。

またもやつまらないストーリーの完成です。観客は主人公が病院に通う様子を見せられるだけ。退屈きわまりない映画です。

あともうひとつだけ失敗例を出しておきます。いろいろ見ておいた方があとの説明がちゃんと頭に入ってきます。

サッカー部の主人公は女子マネージャーのことが好き。

思い切ってデートに誘った。するとOKしてくれた。

休日に女子マネージャーとデートをした。「あー楽しかった」めでたしめでたし。

主人公が頑張って女子マネージャーに告白してデートするだけのストーリーです。全然面白くありません。

失敗例を3つ見てもらいました。どれもつまらないストーリーのお手本のような駄作。

「観客の見たがっているものを見せれば面白くなるのではないのか。ならば試合で勝つ様子を見せれば観客は喜ぶんじゃないのか。ケガが無事に治る様子を見せれば心地よさを味わってくれるのではないのか。女子マネージャーとのデートなんて幸福そのものではないのか」

こんなふうに思い違いをしてしまいます。活躍や幸福を見せれば観客は簡単に喜ぶだろうと考えてしまっています。

でも3つの失敗例を見ておわかりのように、そうはなりません。ナゼだかわかりますか?

この3つの失敗例は観客の望むものを提供しているつもりですが、実は出来ていません。なぜなら「こうなって欲しい」という感情移入を生み出せていないからです。

観客が感情移入してしまうような戦いの構図になっていません。はっきり言ってどうでもいいような戦いです。主人公が勝とうが負けようが観客は知ったことではない戦いばかり。

サッカー部の主人公が今日の試合に勝とうが負けようが観客にとってはどうでもいいこと。興味なし。

主人公の怪我にも興味なんてわきません。そんなものは病院に通えば自然と治るだろぐらいにしか思わないですよね。

主人公と女子マネージャーの恋の行方にも興味がわきません。勝手にしてください。

こんな感じで観客は興味がわかず「こうなって欲しい」という願望を発生させるまでには至っていません。願望自体が発生していないのだから「見たがっていたものを見せる」ということは当然不可能。観客には見たいものがないのだから。

見たいと思うようなものをちゃんと用意して、それを待ち望むようにさせないといけません。

失敗例にはそれがない。だから観客にとっては主人公が試合で勝とうが、ケガが治ろうが、恋が実ろうが知ったことではありません。

主人公がただ活躍すればいいわけではありません。「試合に勝ったり、恋が実ったり、幸福なシーンを用意すれば観客は心地よさを感じてくれる」などと短絡的に考えると失敗します。

主人公の恋人が死ねば観客は号泣してくれると短絡的に考えてしまうのと一緒です。「悲劇を起こせば観客は簡単に泣いてくれる」などと安易に考えてはいけません。

幸福や悲劇を安易に出しても感動は生まれません。観客の心に願望を生み出せていないのだから機能しなくて当然です。

面白さのメカニズムは単純です。望んだとおりのことが起こるから観客は心地よい気持ちになる。それだけです。しかし難しいのは観客に「こうなって欲しい。こういうのが見たい」と思わせること。願望を持ってもらうこと。

こうした感情移入を発生させることが実は非常に難しい。みんなここでつまずいています。面白いストーリーを作るむずかしさはここにあります。

ではどうすれば観客に「こうなって欲しい」と思ってもらえるのか。

承を抜くとどんな名作でも駄作になる

3つの失敗作がつまらないのは主人公がただ頑張るだけの話だからです。

ストーリーに意味がありません。だから観客にとっても意味がなく、「こうなって欲しい」という願望を持てません。

その結果、感情移入が発生しないということに。

ストーリーに意味を与えましょう。テーマを用意しましょう。

そしてテーマを描いていくのは承の部分です。ストーリーというものは承を抜くとどんな名作でも駄作になります。自分の好きな映画などで考えてみてください。もし承が抜けていてすぐにクライマックスシーンが始まるとしたらどんな感じになるでしょうか。すごくつまらない感じになってしまいますよね。何かもの足りないような。

テーマを描いていく承のパートというのは実は非常に大事です。3つの失敗例がつならないのは承が抜けているから。起から転結へそのまま直行してしまっています。だから勝利にも意味がなくて面白くありません。観客も感情移入なんかしてくれません。

ストーリーを面白くする鍵を握っているのはテーマです。テーマを含む戦いの構図をしっかりと構築できたら、観客は感情移入してくれて「こうなって欲しい」という願望を持ってくれます。

そうなればあとは単純。観客の望むものを見せて心地よさを味わってもらうだけ。

面白いとは何かについて根本原理を解説してきましたが、ストーリーを面白くする具体的な方法については次のページ「面白いストーリーの作り方」でやります。テーマなどの話が出てくるこのへんから内容が高度になってきます。

このページで話したことを前提に解説していくので、最後に今一度面白さの原理を振り返っておきましょう。

感情移入を発生させる戦いを用意
観客「こんな奴らが世の中にのさばっていては大変だ」

 

見たかったものが出てくる
観客「やったぜ黄門さま!」

この単純な大原則を頭に叩き込んでおいてください。

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