面白いストーリーの作り方

何に注意してストーリーの設定を作ればいいのか

目次

ストーリーの設定で一番大事なことは、どうなるのか見てみたくなるような話にすること。

観客を引き込むような物語設定になってないといけません。

「こうなればいいな」と観客が思うような設定を作る

面白いとは何か」のページで解説したように、面白さの原理は単純です。「こうなればいいな」と観客に思わせ、その通りのことが起こればいいんです。そうすれば観客は心地よさを感じてくれます。

これが面白さの正体です。

物語の設定で必要なことは「こうなればいいな」という感情をとにかく発生させること。

そのためには、設定を聞いただけで面白そうな感じがしないといけません。ドラマの予感が感じられないといけません。

江戸時代に暮らすやさしい青年と老いた母親の貧しくも慎ましい暮らし。そんな設定では「こうなればいいな」という願望は発生しません。「貧乏だけど頑張るんだろうな」ぐらいの予想しか持ってもらえず観客の興味を引きません。

村の掟で老いた母親をうばすて山に捨てに行かないといけない。そういう設定だと観客の心には「お母さんを捨てないで欲しい」という感情が生まれます。

「うばすて山に母親を捨てにいく話か。いくら村のしきたりだからってお母さんを山に捨てるなんてひどい。捨てに行ったけどやっぱり捨てられないという展開になればいいな」

こんなふうに切望させたら成功です。

設定を作るときは「こうなればいいな」が発生しているかどうかを常に意識しましょう。観客にどれぐらい「こうなればいいな」と思わせているか。その強度こそが面白設定の基準となります。

こうした基準は大切です。どんな設定を作ればいいのかわからず悩んでいる人は「面白い設定を作らねば」ぐらいの感覚しか持っていません。漠然としすぎているので何をどうすればいいのかわからず、設定をいい方向へ練り上げていけません。

基準がちゃんと定まっているからこそ何を作ればいいのかがわかります。

自分の書きたいものを普段から探しておく

いざ書くときになって「何の話を書けばいいのだろう?」とならないよう普段から書く題材を探しておきましょう。

題材は普段の生活の中でも見つかります。日常生活で興味を引かれたものが題材になるし、人にされたことや言われたことも題材になります。

映画を観ているときや小説を読んだときに何かを見つけることも多いです。まだ映画を観ている最中なのに自作小説用のちょっとしたシーンを思いついたり、キャラクターを思いついたり。

書く題材は普段から探しておきましょう。

このとき大事なことは、自分が本当に書きたいと思えるものを探すこと。

面白いものを探すのではありません。

面白くなりそうかどうかを考えるのはあとの作業です。題材を探すときは自分が情熱を傾けられそうかどうかがすべて。

なぜなら面白さは段階的にアップさせられるから。でも自分が書きたいかどうかは後からアップできません。

自分が書きたくなるものというのは、自分の読みたいものとほぼ一致しています。何を書くべきかうまく見つけられない人は、自分の読みたいものを考えてみましょう。自分は本屋でどんな小説を探しているでしょうか。テレビでどんな映画が放送されることを望んでいるでしょうか。

自分の望むものを自分でも書けばいいだけです。

段階的にパワーアップさせる

実を言うと、いきなり面白そうな物語設定を作る必要はありません。

一気に全部のアイデアを思いつくのではなく、段階的にパワーアップしていく感じで作っていきます。おそらく天才たちもそうです。ある日突然傑作のアイデアを一度に全部思いつくという感じではなさそう。

物語のテーマの作り方」のページでも、書きながらテーマを見つける方法を解説しましたが、似たような感じです。

まず最初に思いつくのは他愛もない話です。貧しい青年と老いた母親の慎ましい暮らしとかそんな感じのものしか思いつきません。

しかし天才はどこかで覚醒します。「うばすて山へ母親を捨てに行かないといけなくなるというアイデアはどうか。よし、これで行こう」どこかの地点でそう閃きます。

凡人もこれを真似しましょう。段階的に設定をパワーアップしていきます。

初期のアイデアは平凡で使い物にならないようなものでOK。とにかく自分はこれが書きたいんだという情熱を感じるものを用意しましょう。

あとは段階的に強化して覚醒させます。

『バックトゥーザフューチャー』だって最初は、過去にタイムスリップした少年が頑張って現代に戻ってくるだけの話だったかもしれません。父と母をカップルにしてあげないといけないというアイデアは、あとから思いついたような気がします。

『市民ケーン』だって最初は、死んだ大富豪のことを調べてみると意外と寂しい人生だったという話だったのかも。ローズバッドという謎の言葉を残して死んだというアイデアはあとから思いついたのではないでしょうか。

三浦綾子の『氷点』にしても、犯人の子と知らずに育ててしまったというアイデアは、あとから思いついたのかもしれません。最初は普通の家庭の母と娘のすれ違いを描いただけの地味な話だった可能性があります。いきなり核となるアイデアまで全部出てくるとは思えません。

天才の考えることはわからないので推測でしかありませんが、おそらくアイデアの連鎖でどんどん設定が輝いていったと考えられます。

ある家庭の母親と高校生の娘が喧嘩して仲直りする話。これぐらいなら誰でも思いつきます。でもこの程度の設定では観客に「こうなって欲しい」と思わせる力はありません。

ここからさらに厳しさを強化して、この母と娘は実の親子ではないというアイデアを加えると違ってきます。実の親子ではないというだけでなんだか仲直りして欲しい気持ちがちょっとは湧いてきます。観客が抱えている救われない気持ちをちょっとだけ揺さぶります。

こうしたアイデアがストーリーを面白くしていきます。

実子ではないという設定はいろんな映画や小説に出てきます。『八日目の蝉』なんかは母親は誘拐犯で、自分はその誘拐された子供だったという話だし、福山雅治主演の映画『そして父になる』は病院の取り違えで他人の子を育ててしまった話です。昔話の桃太郎だって実子ではない息子だけが立派に育ったという話です。

つまり実子ではないという設定は、映画や小説にたくさん触れて勉強していたら充分出てくるアイデアなんです。努力でどうにかなります。

問題はこの先です。だんだん天才の領域に入ってきます。

犯人の子だったいうアイデアがはたして出てくるかどうか。

愛する幼い娘が殺された。

犯人は死んだけど主人公の心は癒えない。その悲しみを打ち払うようにして養女を迎い入れ、溺愛する。

幸せな時間が過ぎていった。でもある日、養女が犯人の子だと知る。

ここまで来れば観客も「憎しみを乗り越えて欲しい」とか「養女を愛してあげて欲しい」というような強い願望を持ちます。あとはストーリーをうまく転がしていけばいいだけです。

犯人の子と判明したとはいえ幼少の頃から溺愛してきた養女です。主人公は迷い葛藤します。しかしちょっとした出来事をきっかけに憎しみが噴出して嫌がらせを始めます。

物心がつく前に引き取られ可愛がられて育った養女は、自分が実の子でないことすら知りません。そのため母の豹変に戸惑うばかり。でも主人公の嫌がらせはどんどん止まらなくなります。主人公の胸には「おまえの親に娘を殺されたんだ」と言ってしまいたい気持ちだって何度もこみ上げてきます。それをなんとか抑制します。

でもついに言ってしまいます。

ショックを受けた養女は「ごめんなさい。わたし死にます」という書き置きを残して出ていってしまいます。その書き置きを見つけた主人公は青ざめます。ここからが三浦綾子『氷点』のクライマックスです。主人公はそこではじめて強めてしまった想いに気づきます。犯人の子とは知らず溺愛してきたわけだから。

養女を探しにいく主人公の姿に全国のお母さんたちがどれだけ涙してきたことか。

いい物語設定を思いつけばクライマックスでもこれだけ想いが強く出ます。

氷点2001 テレビドラマ 三浦綾子

もはや天才の領域ではあります。しかし目指すべきはこの地点です。目指す場所さえ感覚的にわかっていたら何とかなります。

最初の構想では母と娘のちょっとした親子喧嘩の話でしかありませんでした。それが「実の親子ではない」というアイデアを経由してどんどんパワーアップ。使い物にならないように思えたアイデアがいつのまにか名作の出発点に。

一般家庭の母と娘が喧嘩して仲直りするだけの話

実の親子ではない母と娘の衝突。

娘を殺された悲しみを打ち払うようにして溺愛した養女。でもある日犯人の子だったと知る。

物語設定を考えていくときはこのように段階的にパワーアップさせていきます。「こうなって欲しい」という願望すら観客から引き出せていなかったアイデアでも、ちょっと手を加えれば願望を生み出せるし、もっと磨けばもっと覚醒していきます。

最初に思いつくアイデアはたいてい使い物になりません。パワーアップさせて「こうなればいいな」という願望を引き出せるようにしましょう。それである程度のストーリーにはなります。

しかしもう一段上が存在します。妥協せずさらなるパワーアップを目指しましょう。天才たちが到達するレベルはもっともっと上です。

もう一段上が存在する。この感覚だけは忘れないように。

2枚合わせにする

実際に物語設定を作るときに注意しておかないといけないのは、ちゃんと裏とオモテの2枚合わせにすること。

『氷点』にしても、ただ親子のすれ違いの話を作ろうとだけ考えていてはなかなかアイデアが発展していきません。裏のストーリーを意識する必要があります。

母と娘が衝突して仲直りするというのがオモテのストーリー。それを通して愛が再確認されていくのが裏ストーリー。このように考えることができれば思いつくアイデアが違ってきます。

設定をパワーアップしていくには裏とオモテの2枚合わせで考えることが非常に大事です。「頑張っていろいろ考えたけど面白そうな設定にならない」そう嘆いている人は、オモテのストーリーだけをあれこれ必死に考えている可能性があります。

2枚合わせにするという基本を知らない人も多いので、次のページで詳しく解説します。

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