面白いストーリーの作り方

テーマとは何? ストーリーが面白いかつまらないかはテーマで決まる

目次

面白いストーリーになるかどうかはテーマで決まります。

テーマをちゃんと構築できたら名作に。できなければ駄作で終わります。

天才と凡人の差が一番出る部分でもあります。テーマを構築して面白いストーリーを作れるのが天才と呼ばれる人たちです。主人公がただ頑張るだけの話しか作れないのが凡人。

天才の領域への挑戦になるので難しいことは覚悟してください。

テーマとは何か

テーマとはそのストーリーの中で描かれる人生のことです。

ストーリーというものを使って観客に人生を実感させます。

ストーリーを通して人生の本当の姿を浮かびあがらせると言った方がわかりやすいでしょう。

普通に暮らしている分には実感できないもの、意識にのぼらないもの、隠れているもの、見落とされているもの。

こうした普段は見えないものがテーマになります。

わたしたちには人生が見えていません。見えないまま生きています。その見えないものをストーリーを通して描きます。

なかなか見えないものだからこそテーマを描くことには価値があります。それを鮮やかに浮かび上がらせるからこそ人々はストーリー・物語を求めてやみません。

「テーマとは何か?」それを学ぶ上で一番わかりやすい教材は、実はお笑い芸人の鉄拳が作ったパラパラ漫画の『振り子』です。youtubeに置いてあるから誰でも無料で見れるし、たった4分ほどの作品なので忙しい人でも大丈夫。

そしてこの『振り子』にはテーマが単純な形でわかりやすく出てきます。プロの作家ではないからこその単純明快さです。

『振り子』のテーマは、無情に過ぎていく時間です。その中でしか生きられない人間の切なさが描かれています。

男と女が出会って結婚して子供を作って、やがては老いて死んでいきます。そういう単純な話を振り子の絵を効果的に使って描いています。動きつづける振り子が時間の流れをうまく表現しています。

このパラパラ漫画がたくさんの人から称賛されたのはクライマックスシーンで主人公の想いが強く出ているからです。動いている振り子を止めて老いた妻の死を必死に食い止めようとします。しかし当然ながら止まりません。

老いて死んでいくのは人間のさだめです。無情に流れていく時間の中でしか人間は生きられません。

しかし普段の生活で時間の無情さを感じる機会なんてあるでしょうか?

時間が流れていることに気づくのは手遅れになったときです。『振り子』でも主人公が必死に時間を止めようとするのは妻が死ぬときです。

こうした人生の本質は普段は見えません。言われないと時間の無情さや怖さってわかりませんよね。

テーマが力を持っているのはこの普段は見えないものを観客に実感させる力があるから。

見えないものを描くというのが非常に重要なポイントとなります。

ひとつだけ間違ってはいけない重要なことは、『振り子』が大勢の人の涙を呼んだのは、老いた妻が死ぬからではないということ。

時間を止めようとしているのに止まらないその無常さ、人間の無力さこそが涙へつながるポイントです。

さだめに抗えず老いて死んでいく人間の姿が切ないのです。過去を後悔して時間を戻そうとしても戻らないから切ないのです。

「登場人物が死ねば観客は泣くのではないか」

「崇高な愛をうたいあげれば感動するのではないか」

ストーリー作りで一番間違いやすいこの2つのお涙頂戴要素が『振り子』には含まれています。でも感動のポイントはそこではありません。時間というテーマを描いているからこそ感動が生まれます。

こうしたことも学べる『振り子』という作品はまさに教材として最適なわけです。

少年時代の終わりを描いた『風スローダウン』

テーマとは何かを学ぶ上でもうひとつ別のわかりやすい例を出しておきます。

取り上げるのは島田紳助が作った青春映画『風スローダウン』。こちらもお笑い芸人が作ったものだけにわかりやすい。

風スローダウン 島田紳助

この映画は少年時代の終わりがテーマになっています。バイクレーサーを目指す主人公やその友人たちに少年時代の終わりが訪れる話です。

「プロのバイクレーサーになりたい」そう夢見ながら青春時代を過ごす主人公。でもバイクレースの世界もそんなに甘くない。お金のない自分を見限って恋人が他の男と結婚しそう。どうすればいいのか。夢をあきらめるのか。

永遠に子供のままではいられません。でもそれに気づく少年などいません。そのときになってはじめて少年時代の終わりが来ていることに気づきます。

『風スローダウン』の主人公だってバイクレーサーを目指す青年のままで永遠にいられるわけがありません。終わりのときがやって来ます。そのときに人生が本当の姿を現します。

主人公はそれ気づき、大人の道へと足を踏み出していきます。

芸能人が撮った映画だけにいろいろと傷もある作品です。でもプロじゃないからこそのストレートさとクサさを持った青春映画です。興行収入とか評判とか一切考えず、自分の描きたかったものをそのまま撮った感じです。こういう映画はプロの監督には撮れせん。

どストレートな作品だけにテーマがとにかくハッキリときれいに出ています。

少年時代の終わりなんてみんな経験しています。でもそれを意識できた人がどれだけいるでしょうか。実感できた人がどれだけいるでしょうか。

少年時代に終わりが訪れることは絶対の真実です。でも人間はそれに気づきません。

しかしそんな隠れていて見えなかった少年時代の終わりが、人生を決定づけてしまったりします。

人生は形なきものです。だから本当の姿など普段はなかなか見えません。それなのにちょっとした出来事が将来へ特大の影響を及ぼしてきます。

これを描くのが物語というやつです。

見えないものを描くという気持ちを忘れてはいけません。見えないものをテーマに据えて人間の生き様を描くからこそ、物語には価値があります。

まずはテーマをシンプルに捉えるところからやってみよう

テーマを用いて人生の本当の姿を描き出しましょう。それによってストーリーに意味が生まれます。

しかし難しく考えすぎると作品がいつまでたっても書けなくなります。ここまで解説してきたのは原理原則です。最終的に目指す場所という捉え方でいいです。

鉄拳の『振り子』にしても島田紳助の『風スローダウン』にしても一番上手くいった成功例です。さすがにいきなりこのレベルを目指すのは無謀です。最終目標ぐらいに考えておいてください。「テーマとは何だろう?」とわからなくなったときに基本形として思い出せばいいです。

実際に自分で作品を作っていくときは、ここまで哲学的である必要はありません。高尚である必要もありません。テーマを小難しく考えすぎてしまうと逆に失敗します。

むずかしいことが出来るようになるコツは、単純化して考えることです。まずはシンプルに捉えるところからスタートしましょう。

面白いストーリーというのはオモテのストーリーと裏ストーリーの2枚合わせになっています。オモテのストーリーは事件を担当。テーマは裏ストーリーが担当します。「テーマとは裏ストーリーのことだ」と単純に考えてください。最初のうちはそういう認識でOK。

実際、裏ストーリーを用意して2枚合わせ構造にちゃんとなっていれば、テーマはそれなりの形になるものだし、それなりに効いてくれます。

いきなりむずかしく考えると逆にうまくいきません。まずは単純な捉え方で。

テーマを作り慣れていない人はまずは単純に考え、裏ストーリーを作ることに専念しましょう。どんな裏ストーリーを用意すればいいのかといえば、間違いが正される話です。

『振り子』の主人公も時間が流れていることにずっと気づきません。間違っています。妻が死ぬときになってやっと人生に気づきます。

バイクレーサーを目指す『風スローダウン』の主人公も間違っています。恋人が他の男と結婚しそうになったときにやっと少年時代の終わりが来ていることに気づきます。

間違いが正される話を裏ストーリーとして用意する。そうすれば人生の本当の姿を浮かび上がらせることができる。

とりあえずこのようにおぼえておきましょう。

テーマとは何か?
「人生の本当の姿」



それを描く方法
「間違いが正される話を裏ストーリーとして用意する」

一番まずい選択は、難しいからと何も手を付けないこと。何もやらないこと。

「テーマとは裏ストーリーのこと」そういうシンプルな捉え方でも最初はいいから、とにかくやってみましょう。やることでその経験が自分のものとなり、どんどん力がついていきます。

テーマはけして高度なものではありません。世界がいったいどのようになっているのか。そんな世界で人間がどのように生きているのか。それを描けばいいだけです。それが人生を描くということ。娯楽映画にさえ備わっているものです。

娯楽映画はエンターテイメント要素によって面白さが支えられていますが、でもその裏にはテーマがしっかりとあって、しっかり効いています。

一番わかりやすい例は映画『ロッキー』

クライマックスの試合のシーンで観客が感動するのは、ロッキーが頑張っているからではありません。あきらめていた人生をなんとか取り戻そうとしている姿に胸を打たれます。

ロッキーは自分の人生をあきらめていました。つまり間違った考えを持っていました。この間違いが正される話を裏ストーリーとして設置しています。

これによって人生の本当の姿を浮かび上がらせています。

限界というものは自分自身が枠をはめて決めてしまっています。そのせいで自分自身には本当の可能性が見えません。自分に何が出来るのか、どこまで出来るのかが人間にはわかりません。だからロッキーも自分を枠にハメてあきらめていました。

こうしたテーマの核心部分を最初から考えすぎると、無駄にむずかしく感じてストーリー作りが進まなくなります。

だからまずは単純に考えましょう。

裏ストーリーをちゃんと作ってオモテと裏の2枚合わせにします。

無名の3流ボクサーがただチャンピオンとの対戦に向けて頑張るだけの話にしてはいけません。オモテのストーリーだけでは退屈な映画にしかなりません。ちゃんと裏ストーリーを用意しましょう。

『ロッキー』の場合主人公は、最初の頃は自分の人生をあきらめています。でもチャンピオンとの試合に向けて始動していくうちに止まっていた時間が動き始め、やがては自分の人生を取り戻そうという気持ちが芽生えます。

最初は間違っているけど、戦いの中でそれが正される。こういう話が裏ストーリーとして用意されています。だからこそ「可能性」についての人生の本当の姿が浮かび上がってきます。

テーマはどうしても難しく感じるものです。「人生の本当の姿を描かないといけない。見えないものを描かないといけない」そんなふうに慣れないうちから難しく考えてしまうと、何をどうやればいいかわからなくなります。

高尚なテーマを語る必要はありません。つい見落としがちなものを用意すればいいだけです。みんながやってしまいがちな間違いを裏ストーリーとして用意しましょう。

簡素なテーマでも名作になる

エンターテイメント作品や短編はテーマが簡素です。でもちゃんと効果を発揮して名作に仕上がっています。

こうした簡素なものこそ「テーマとは何か」を学ぶには最適です。いくつか例を見ていきましょう。

SFパニック映画の『エイリアン』もテーマがわかりやすく効いてる娯楽作品です。

エイリアン 映画

宇宙船になぞの凶悪生命体が入り込んでしまってそれを退治しようとする話です。宇宙という人間の手に負えない大きなものの怖さがテーマとして含まれています。

調子にのって宇宙開発をしたり身勝手に星々をどんどん汚染していくと、わかってない宇宙の怖さに遭遇するぞという話です。

エイリアンをただ退治するだけの話ではありません。そのオモテストーリーに対して「宇宙の奥深さ・宇宙開発の恐さ」という裏ストーリーが用意され、ちゃんと2枚合わせになっています。

もしテーマがなくてオモテストーリーだけだったら『エイリアン』は途端につまらない映画になります。ヤバそうな生き物が宇宙船に入ってきたのですぐに排出ボタンを押してエイリアンを宇宙の彼方に吹き飛ばした。めでたしめでたし。そんなつまらない話になってしまいます。

エイリアンとの戦いにちゃんと意味を持たせる必要があります。これを描くのが裏ストーリーです。

宇宙船に入り込んできたものが何なのかわかっていない承をしっかり描かないと面白くなりません。このわかってなさこそがテーマです。宇宙をわかった気になっている人間の姿そのものです。

わかっていないせいで船員がどんどん死んでいきます。船員たちだけではなく観客さえも想像できなかった姿をエイリアンは見せはじめます。

承の後半に入ると主人公たちはやっと自分たちの間違いに気づきます。どうやらとんでもなく危険な生命体に遭遇しているぞと。間違いに気づいた主人公たちはもう宇宙船ごと爆破する作戦に方針を転換します。

こうしたテーマを絡めたストーリー展開が『エイリアン』という映画を面白くしています。

浦島太郎 テーマが伝えたいこと

昔話の『浦島太郎』にもテーマがわかりやすい形で出てきます。

『浦島太郎』のテーマは簡単に言ってしまえば「行ってはいけない場所に行ってしまった男の話」です。

本当は亀など助けてはいけなかった。交流などしてはいけなかった。竜宮城などにも行ってはいけなかった。さらに浦島太郎は竜宮城で長居までしてしまいます。帰り際にはもらってはいけない玉手箱までもらってきてしまいます。

この見落としがテーマです。でも人間はこれがわかっていません。

平和な現代人にはわかりにくい見落としですが、浦島太郎の話が作られた当時は人なんて簡単に死ぬ時代です。浜辺に食料を取りにいったまま帰ってこない人なんていくらでもいました。森の奥に入っていったまま帰ってこない人なんてよくいた時代です。

その恐さを描いた昔話が浦島太郎です。人生にかくれ潜む闇の部分ですね。

帰ってこなかった人たちがどんな目にあったのか。それを想像して話は作られています。帰ってくるチャンスは何度もあったはずなのに帰ってこれなかった人たち。

だからこそ玉手箱を開けたらおじいさんになってしまわないといけません。お礼の小判がザックザクではただの道徳的な話になってしまいます。そんなつまらない話は後世に残りません。そんなものはオモテストーリーしかない意味のない物語です。

浦島太郎はテーマを内包しているからこそずっと語りつがれてきました。行ってはいけない場所に行って帰ってこれなくなるという裏ストーリーが物語中ずっと効いています。

絵本の『おおきなかぶ』も単純なテーマで出来ています。

おおきなかぶ 絵本

畑に大きなカブが埋まっているのを見つけた。

でもなかなか抜けないのでどんどん手伝いの人が増えていく。おばあさんから犬から猫から総動員でカブを引き抜こうとする。

でも抜けない。

しかし最後に小さなネズミが手伝いに加わるとやっとカブは抜けた。めでたしめでたし。

この絵本のテーマは何かといえば、みんなで力を合わせることの大切さとかそういうことではありません。最後のネズミが大きな意味を持っています。一見些細に見えるものこそが物事を動かす。それを描いた話です。

エジソンの名言「1%のひらめきと99%の努力」と同じような意味です。1%のひらめきがないと99%の努力は無駄になります。

でも人間にはそれが見えていません。あともうちょっとでカブが抜けるのにチャレンジをやめてしまいます。

足らないのは1%のひらめきです。ネズミのひと頑張りです。これが物事を動かします。

ストーリー作りなどはまさにこれに当てはまります。完成まであと一歩なのにあきらめてしまう。名作になりそうなのに1%のひらめきがないせいで駄作に終わる。

この足らない1%のひらめきが何かといえば、ストーリー作りにおていはテーマです。テーマこそがネズミのひと頑張りにあたります。

まずは単純な捉え方から始めましょう。テーマはむずかしいものに思えるけどネズミ程度に考えておけばいいです。

裏ストーリーさえあればなんとかなります。まずは裏ストーリーを作ることに慣れてください。

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