ストーリーのちょうど中間あたりでミッドポイントと呼ばれる重要な出来事が起きます。
シナリオの方向性がいっきに転換するところです。ミッドポイントを挟んで承の後半からはストーリーの流れが大きく変わります。
120分の映画ならちょうど中間の60分あたりでミッドポイントが訪れるのが標準的です。
ミッドポイントとはストーリーの中間あたりで起きる大きな事件のこと。そしてこの事件は承前半の結果です。
承の前半で主人公は間違った行動をしてきました。その結果として当然起こるべくして事件は起こります。
『エイリアン』では承の前半で次々と乗組員たちがエイリアンに殺されます。そしてミッドポイントでは味方の裏切りが発覚。どうやら地球の科学者たちは主人公たちを犠牲にしてエイリアンを地球に持ち帰らせようとしていることが判明します。そしてエイリアンが自分たちの手に追える相手ではないことも判明。
「この宇宙船ごと爆破しなければ!」
味方の裏切りやエイリアンの危険性を見落としていたせいで、ついには宇宙船ごと爆破するしか助かる道がなくなってしまいます。宇宙船を爆破して小型船で地球に帰る作戦に切り替えます。
こうしたミッドポイントに至ったのは承前半の見落としのせいです。
味方の裏切りにさえ気づいていたらエイリアンが宇宙船に侵入するのは防げたし、エイリアンがどれほど危険な生き物かわかっていたら、チマチマ退治しようとはせず全員で力を合わせて一気に攻撃を仕掛ける方法もありました。
でも承の前半で主人公たちは自分たちの間違いには気づかず、ついには宇宙船の爆破という最終手段しか道がなくなります。
ミッドポイントは見落としの末に至った結果です。
派手な大事件をだた起こしただけでは機能してくれません。ストーリーを面白くするためには流れをきちんと構成する必要があります。
承の前半で主人公は、何かを見落としているせいで間違った行動をします。
その見落としの結果としてミッドポイントの大事件を招いてしまいます。
主人公はミッドポイントのこの事件をきっかけに間違いに気づきはじめ、戦いの方向性が大きく変化していきます。
ミッドポイントを中盤の中だるみ防止策のように勘違いしている人がいます。観客に飽きられないよう中盤で派手な事件を起こすのだと。
しかし当然ながらこうした浅い考え方ではミッドポイントをちゃんと作ることはできません。
そもそも中だるみ防止の大事件が必要な時点でそのストーリーは失敗しています。設定から何から最初からやり直すべきです。中盤で派手な事件を起こしたぐらいでいい作品に生まれ変わるとはとても思えません。
ミッドポイントを作るときの感覚としては「どんなことが起きたら流れが大きく変わるだろうか。どんな事件が発生したら主人公は自分の間違いに気づくだろうか」というふうに考えます。
「中だるみさせないためにどんな派手な事件を起こしてやろうか」みたいに考えていては効果的なミッドポイントは作れません。
ミッドポイントの役割はストーリーの方向性を変えることです。たとえば『マディソン郡の橋』のミッドポイントは一言のセリフだけです。大事件も何も起きません。
『マディソン郡の橋』は中年女性の不倫の話です。夫や子供たちが旅行に行ってる4日間のあいだに不倫をします。承の前半はふたりが結ばれる過程を描いています。しかし承の後半からは結ばれたふたりが今後どうするのかを決断する展開へ移っていきます。夫を捨てて彼についていくのか、不倫を終わらせるのか。
そしてミッドポイントはたった一言のセリフだけです。結ばれたふたりがバーで楽しく飲んでいるシーンです。主人公は「楽しいよね」みたいにして浮かれています。しかし彼が言います「でもボクたちにはあと2日間しか残っていない」
この一言によってふたりが結ばれるパートは終了。今後どうするのかというパートへ切り替わります。
たった一言で終わるミッドポイントだってあるんです。無駄に大きな事件を起こす必要なんてありません。
流れが大きく変わればいいんです。主人公が自分の間違いに気づき始めるキッカケにさえなっていればいいんです。
ミッドポイントを作るとき重要なのは3つの構成要素の流れです。
この3つの流れをいろんな実例で見てみましょう。
マディソン郡の橋
起きる原因となった見落とし | ここまで深く不倫にハマるとは思っていなかった |
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ミッドポイント発生 | 「ボクたちにはあと2日間しか残っていない」 |
その後の変化 | 今後どうするのか |
エイリアン
起きる原因となった見落とし | 味方の裏切りやエイリアンの恐ろしさに気づかなかった |
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ミッドポイント発生 | 陰謀やエイリアンの危険性が発覚 |
その後の変化 | 宇宙船ごと爆破するしかない |
俺たちに明日はない
起きる原因となった見落とし | 銀行強盗で暮らしていけるような気がしていた |
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ミッドポイント発生 | 警官隊の大規模な襲撃 |
その後の変化 | 自分たちに未来がないことを悟りはじめる |
ロッキー
起きる原因となった見落とし | 人生をあきらめている |
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ミッドポイント発生 | トレーナーと喧嘩 |
その後の変化 | 人生に立ち向かう |
羊たちの沈黙
起きる原因となった見落とし | 立派なFBI捜査官になれば何も恐れず暮らせる |
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ミッドポイント発生 | 叔父が子羊を殺してた秘密を油断して話してしまう |
その後の変化 | 自分は永遠に子羊のままではと疑いはじめる |
ミッドポイントを作るときは3つの構成要素を意識しながら作っていきましょう。
映画を観るときなんかも3つの構成要素に注目してください。ミッドポイントというものが感覚的につかめるようになります。
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