面白いストーリーが作れないと悩んでいる場合、よくある失敗が6つあります。
うまく書けない・作れないと感じている人は、この6項目を一度確認してみてください。なぜ自分の作るストーリーがつまらないのか、面白くないのか。その原因が見つかるはずです。
初心者は一から基本を学んでいかないといけません。しかしたくさん小説を書いてきた人の場合は、全部ではなくどこか一部だけが間違っていることも多いです。
その部分さえ修正できたら突然覚醒して伸びはじめます。
世間一般の人はテーマを誤解しています。テーマとは作者の言いたいことや伝えたいことなんだと。
しかしテーマは作者の考えや持論のことではありません。テーマとはそのストーリーの中で描かれている人生のこと。映画や小説は人生の本質的な性質をストーリーを使って描きます。
ストーリーは個人的な主義主張を発表する場ではありません。人生に翻弄されている人間の姿を描く場です。みんなに共通する普遍的なものが物語として描かれています。
だから人を引きつけるし、感動も生み出します。
テーマをメッセージだと勘違いしていることこそが、実はつまらないストーリーを作ってしまう最大の原因です。
テーマは面白いストーリーを作る上で一番大切なものです。面白くするためには絶対に必要。もしテーマが機能していなければ、それはトリックが機能していない推理小説と一緒です。
一番大切なものなのに世間では勘違いされています。面白いストーリーを作りたいと思っている人や作家志望の人でも勘違いしている場合が多いです。
テーマについてしっかり勉強して修正するだけで能力が花開く人は、かなりたくさん存在しているはずです。
参考ページ:テーマとは何か?
観客をストーリーに引き込むためには感情移入が大事。
でもこれは登場人物に対して発生するものではありません。観客は戦いの構図に対して「こうなって欲しい」という願望を持ちます。これこそが感情移入です。
この大原則がわかっていないとキャラクター設定ばかりに時間をかけてしまいます。
でも必死に考えないといけないのは戦いの構図です。
観客が「こうなればいいな」と思わずにはいられないような戦いを用意しましょう。「悪者なんか成敗されろ」と思うような戦いでもいいし、「ヒロインにはお金ではなく愛を選んで欲しい」というような戦いでもいいです。
そしてこの感情移入を妨害するような障害エピソードを用意することで面白さが生まれます。「こうなって欲しい」と思っているのにその願いが大ピンチに。だからこそ観客はハラハラドキドキします。「しっかりしろ主人公、負けてしまうぞ!」みたいな感じで観客はストーリーから目が離せなくなります。
やみくもに障害を濫造するのではなく、感情移入に関係ある障害を用意しましょう。
キャラクターに感情移入すると思っている人は、感情移入の場所が見えていないため無関係な壁ばかり用意しがち。オモテのストーリーに対してばかり妨害を用意してしまいます。『ロッキー』でいえばひたすら対戦相手を手強くしているだけ。対戦相手には必殺パンチがあるとか。卑怯な手を使ってくるとか。
でも本当に重要なのは感情移入させている裏ストーリーの目的を邪魔すること。『ロッキー』でいえば人生を取り戻そうとしている部分を邪魔しないとハラハラドキドキは生まれません。
参考ページ:主人公に感情移入させる方法とその重要性
ストーリーの構成は起承転結の4幕構成でおぼえておきましょう。
3幕では足りません。テーマが入りません。
3幕構成で考えている人はとくに2幕目の役割がわかっていません。起承転結でいえば承の部分ですね。事件が発展するパートであるとか、主人公が葛藤するパートであるとか、そういう捉え方をしています。
しかし承の本来の役割は、主人公の間違いが正されていく様子を見せること。これを承の前半と後半に分けて捉える考え方が4幕構成です。承の前半ではまだ主人公は間違った行動をしています。しかし承後半からそうした間違いに少しずつ気づきはじめます。
この「間違いが正される」という変化はストーリーの根幹を成すものです。だからちゃんと変化前の承前半と変化開始後の承後半に分けた方がいいです。
ストーリーをわざわざ分割して捉えるのは、それぞれに役割があるからです。ちゃんと書けているのかをあとから確認するときも、分割しておいた方が判断しやすいです。
物語を3幕構成でとらえているとテーマをちゃんと描けなくなります。
参考ページ:面白いストーリーは起承転結の4幕構成になっている
クライマックスで必要なのは主人公の想いが強く出るシーンです。これを作らないといけません。
クライマックスは火力勝負です。想いが強く出れば出るほど観客を感動させることができます。
しかし多くの人は想いではなく、感情を大げさに表現しようとします。主人公が大声で叫んだり、号泣したり、あるいは演説を始めたり。
主人公がどれだけ感情を高ぶらせても感動は生まれません。必要なのは想いです。
『ロッキー』を思い出してください。第14ラウンドでダウンしてしまったロッキーは、必死に立ち上がろうとします。ロッキーは大声で叫んでないし、泣いてもいません。何か喋ってもいません。
ただヨロヨロと弱々しく立ち上がろうとしているだけ。それなのにその姿からは「人生を取り戻したい」という想いがかなりの高火力で出てきます。
観客を感動させるのはこうした強い想いです。承をしっかり作らないとこの想いは出てきません。
参考ページ:【転結】クライマックスでは主人公の想いを強く出す
少し勉強した人ならキャラクターには弱点が必要だとか、万能キャラはウケないとか、そうしたことを聞いたことがあると思います。
しかしこれは誤解しやすい部分なので注意してください。必要なのは弱点ではなく問題点です。
これを感覚的な言葉に言い換えると「主人公を敗者として捉え、敗者の物語を書く」ということになります。
たとえば幕府に逆らう悪い藩が存在していて、正義感の強い藩がそれを成敗したとします。これなんかは勝者の物語でしかなく、面白くありません。
悪い藩とトラブルになって、相手の卑劣な行いのせいで藩主が切腹させられ、お家も取り潰しに。そうやって没落した家臣たちの仇討ちの話なら面白くなります。『忠臣蔵』も結局は敗者の物語です。
キャラクターに欠点がなくて万能キャラになってしまっているからストーリーがつまらないのではありません。勝者のストーリーにしかなっていないのがつまらない原因です。
弱点とか欠点ではなく、主人公をちゃんと敗者として描けているかを見直してみましょう。
参考ページ:なぜ主人公に弱点・欠点が必要なのか
アイデアや題材は常に探しておかないといけません。
このときよくやる間違いが、面白そうなネタを探してしまうこと。
ストーリーを面白くすることはあとからでも出来ます。でも書きたいという情熱はあとから追加できません。
だから「自分はこれが書きたい」と強く思えるものを探すようにしましょう。
ここを間違うと優れたアイデアや題材ばかり探してしまって「いいアイデアが見つからない」と嘆くだけになってしまいます。
いいアイデアなんてそう転がっているものではありません。アイデアはどちらかというと自分で磨くものです。
黒澤明の『七人の侍』にしても、「農民が侍を雇う」というあり得ないバカげたアイデアがもとになっています。どう考えても駄作映画にしかならないような現実味のないアイデアです。でも名作に備わっているアイデアはたいていバカげています。
最初はバカげたアイデアに思えたものであっても、情熱を傾けて磨けば光ります。
参考ページ:何に注意してストーリーの設定を作ればいいのか
関連記事:修正ポイント
修正ポイントの解説はここまで。ずっと解説してきた面白いストーリーの作り方の説明も、このページで終わりです。
次ページからの最終パートでは物語を作る才能について少し触れて締めたいと思います。
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