面白いストーリーの作り方

面白いストーリーを作れる人が持っている3つの才能

目次

面白いストーリーを作れるかどうかは次の3項目で決まります。

  1. 感覚
  2. ヒント集の充実
  3. 書くべきテーマを持っている

言わばこれが物語の才能です。

一番目の感覚に関しては努力でなんとかなります。2番目のヒント集の充実についてもある程度努力で対抗できます。

問題は3番目のヤツ。書くべきテーマを持っているかどうか。ここは天才の領域への挑戦になります。

1.感覚

一番大切なのはやはり基本です。

主人公は目的を持っていないといけないとか、変化が必要であるとか、葛藤がどうだとか、こういう基礎理論ですね。

面白さを生み出す原理がわかっていれば面白いストーリーは作れます。つまらないストーリーになってしまうのは基本ができていないから。

「小説の書き方」とか「マンガの描き方」みたいな本を買えばこうした基本はある程度学べます。

当サイトでも面白いストーリーを作るための基本を一から紹介しています。

つまり基礎理論っていくらでも勉強できます。そして真面目に勉強すればどうにかなります。努力が実りやすいものではあるんです。

しかし、ここからが重要な話ですが、実は入門書をどれだけ読んでも面白いストーリーを作れるようにはなりません。

そこに書かれているものがただの知識でしかないから。

どれだけ知識を得ても面白いストーリーは作れません。知識で名曲が作れないのと同じです。

必要なのは感覚です。カンと言い換えてもいいでしょう。

プロの作家たちはカンでストーリーを作っています。天才たちは知識によって名作を生み出しているわけではありません。

ストーリーをうまく作れるようになるために必要なものは、知識や情報ではありません。カンです。

このサイトでずっと書いてきたことも、実は感覚のことです。知識を得たらそれでOKという内容にはなっていません。カンを身につけるために何度も再訪問することを想定して作られています。

そのためにわざわざいろんな映画や小説を例にとり解説してきました。たとえばストーリーを2枚合わせにするとどんな感じになるのかを、いろんな作品を例に紹介しました。オモテストーリーに裏ストーリーを加えることで急に面白さが機能しはじめる感覚を実際に味わってもらうためです。

この「感覚を体験する」というのが実は重要です。カンを習得するにはこれが欠かせません。

裏ストーリーがどのように効くのか。どんな働きをしているのか。抜くとどれだけストーリーが機能不全を起こしてつまらなくなるか。

こうしたことを感覚的につかめていることが大事です。「基本が身についている」というのは、こういう感覚がつかめている状態をさします。

変化とか葛藤とかミッドポイントとか、用語だけをいっぱいおぼえても意味がありません。知識でストーリーは作れないのだから。

変化がどう機能するのかを感覚としてわかっていないといけません。葛藤を入れるとどんな効果が出るかを経験してわかっていないといけません。

面白いストーリーを作るために必要なのは、こうした感覚です。

「入門書を読んだらミッドポイントについて書いてあった。ミッドポイントというものが存在することを知った。これでミッドポイントを使った面白いストーリーを作れるようになるはず」そんなふうに思いがちだけど、知識を得ただけでは使いこなせません。

ミッドポイントを入れることでどれだけストーリーが面白くなるか。抜くとどれだけつまらなくなるか。これが感覚としてつかめていないと意味がありません。

知識を頼りに作ってもストーリーは面白くなってはくれません。

「入門書には主人公が成長するような話を書けとあった。だから陸上部の主人公が100メートル走のタイムを12秒台から11秒台に縮めるストーリーを作った」こういう失敗をやってしまいます。

知識で作ってしまった典型的な失敗例です。

成長がどのようにストーリーに影響を及ぼすのかを感覚としてつかんでいないと、こうした主人公がただ頑張るだけの話を作ってしまいます。成長が実際にどういうものかをつかんでいないからこそやらかす失敗です。

「ハッピーエンドにしたらいいよと入門書に書いてあった。だから友情で結ばれるストーリーを書いた。でも全然面白いとは思えない。なぜ?」こういう場合も理想郷を履き違えたケースです。

ハッピーエンドとか、崇高な愛とか、心温まる人情とか、そういうものが心地よさを生むのではありません。「こうなればいいな」と思わせて、そのうえで愛とか人情が出てくるから感動が生まれます。ハッピーエンドの失敗というのも基本を感覚としてつかめてないからこその典型的な失敗です。

天才はなぜかこの基本感覚を生まれつき持っています。天才と凡人の差は知識量の差ではないことは容易に想像がつくと思います。差を生んでいるのは感覚を持っているか持っていないかです。持ってない凡人は努力して脳内に組み上げていくしかありません。

時間がかかるし、努力も要します。

唯一の救いは単純さです。基本というのは単純です。このサイトの基本講座で解説してきたとおり非常にシンプル。だからやることはハッキリしています。

ストーリー作りに限らず、どんな業界でも基本はシンプルです。たとえば野球なら、来たボールをバットに当てる。それだけ。150kmの豪速球だろうが高速スライダーだろうがバットに当てられるようになったらプロ野球選手になれます。

サッカーも基本は単純。ボールを狙ったところに蹴るだけ。これが出来れば勝てます。非常にシンプル。

ストーリー作りも同じです。基本はごくシンプル。物語というのは結局は間違いが正される話のことです。面白くするためには「こうなればいいな」と観客に感情移入させて、そのとおりの事が起こればいいだけ。

基本は単純です。

この単純な基本を感覚としてつかめばいいだけ。

でも感覚だけにつかみにくい。

ミッドポイントみたいな言葉をおぼえてテスト用紙に書き込めば済むという話ではありません。ストーリー作りは学校の勉強とは違います。学校のテストというのは教科書を見ながらなら簡単に100点がとれます。しかし映画や小説は入門書片手に作っても傑作にはなってくれません。

必要とされるものが知識ではなく感覚だからです。

しかし残念なことに、この感覚についてちゃんと書いている入門書は存在しません。

プロの小説家や脚本家になれる人は生まれつき感覚を持っている天才です。だから自分の身につけている才能をうまく説明できないし、なぜ自分が面白いストーリーを作れるのかもよくわかっていません。

そういう天才が入門書を書いても当然ながら基本をうまく説明できません。結局はただの知識の詰め込み本になってしまいます。「いいタイトルの付け方」とか「セリフのコツ」などの応用知識の羅列でしかない本も多いです。

「面白いとは何か」という一番書いてないといけないはずの基本すら書かれていない本がほとんど。

こうしたことが原因となり「入門書を買ったけど面白いストーリーを全然作れるようにならないじゃないか」と不満を持つ人ばかりという現状に。「魔法が書かれた本がどこかにあるはずだ。それを探そう」と躍起になる人もいます。

しかしストーリー作りに魔法は存在しません。野球やサッカーと同じで、単純な基本が存在しているだけ。

単純な基本によって勝敗は決まります。投手の投げたボールをどれだけバットに当てられるかで野球の試合の勝敗が決まってしまうように。

ストーリー作りも同じです。強く感情移入させて、強く感動させる。ごくシンプルな基本ですべてが決まります。

知識を詰め込むのではなく、基本を感覚として身につける。そしてカンでストーリーを作っていく。このことを忘れないでください。ストーリーは教科書片手に作るものではありません。

2.ヒント集の充実

ヒント集とは観た映画や小説の中で自作にも使えそうなネタのこと。

例えばジャッキーチェンの『プロジェクトA』を参考にしてお笑い要素を自分の作品に取り入れてみるとか、映画『第三の男』を真似て長いエンディングシーンを作ってみるとか。

こうしたネタをたくさん自分の中に抱えておけば、創作の際にとても役立ちます。

完全にゼロからストーリーを創造するのって不可能です。どんな名作でも過去の作品からヒントを得て作られています。

たとえば『エイリアン』は、脚本家が学生の頃に見たSF映画などが元ネタになっています。

『ゴッドファーザー』はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』から着想を得ています。

シェイクスピアの代表作ともいえる『ハムレット』だって当時いろいろ書かれていた復讐劇を参考にして作られています。

『北斗の拳』の荒廃した世界はマッドマックスの真似だし、拳法の達人という設定はブルース・リーなどのカンフー映画の影響を感じます。秘孔を突くと「ひでぶ!」と爆発して死んでいくのは大昔のチャンバラとか忍者ものの必殺剣に近いノリがあります。

すべての作家が過去のいろんな作品から影響を受けています。どんな名作だって過去作からなんらかのヒントを得て作られています。それが創作です。

だからヒントとなる元ネタはたくさん持っていたほうが圧倒的に有利。

映画などをたくさん見ればいいだけなので、努力すればかなりまかなえます。映画を観ることが好きな人なら趣味で観てるだけでどんどんヒント集が充実していってくれます。

量がとにかく重要です。名作だけ見ていればいいというものでもありません。全然おもしろくない駄作映画のワンシーンが何らかのヒントになる可能性もあります。

ただし基本だけはしっかりと押さえながら見ていった方がいいです。

その映画のテーマが何であるか、クライマックスではどうやって主人公の想いを強く出しているのか、などなど。

「なんとなく面白い映画だったな」としか受け取れない人は、やはりヒント集の充実もなかなか進みません。

「どんどん仲間が死んでいく展開だ。これはエスカレートパターンだな」とか、「主人公が途中から友人を疑いだすのが効いてる。あれがエンディングの切なさを呼び起こすんだろう」そんなふうにいろいろと読み取ることが出来たら、ヒント集は加速度的にどんどん充実していきます。

3.書くべきテーマを持っているか

物語のテーマの作り方」のページでも解説しましたが、天才と凡人の一番の違いは書くべきテーマを持っているかどうかです。

天才は特別な感受性を持っています。その特殊な目で世の中を見ているので、凡人には拾い出せないようなアイデアやテーマを見つけてきます。

凡人にはこうした特殊能力はありません。だからありふれたものしか思いつきません。面白いストーリーも作れません。

4年の寿命しか与えられなかったアンドロイドたちの反乱みたいなストーリーは思いつきません。神への怒りという概念を持たない人には出てこないアイデアです。

日本人がベッドの靴カバーを思いつかないのと同じです。ないものは出てきません。

小説家のスティーブンキングにしても、結局のところ彼がたくさんの傑作を書けた理由は彼が怖がりだったからです。世界一の怖がり男だからこそ傑作ホラーをたくさん生み出すことができました。

彼は暗闇に対して特別な恐怖心と感受性を持っていました。

夜中トイレにひとりで平気で行ける人はスティーブンキングのようなホラー小説は書けません。アイデアが出てきません。

書くべきテーマを持たない凡人が天才たちに対抗するには、日々の心がけしかありません。

普段生活で遭遇する出来事を注意深く観察して、いろいろと自分なりに考えてみましょう。できることはその程度。

一番天才に勝てない部分なので仕方ありません。

努力でかなりの部分はカバーできる

面白いストーリーを作れる人は3つの才能を持っていると紹介してきました。

  1. 感覚
  2. ヒント集の充実
  3. 書くべきテーマを持っている

しかしこれらはかなりの部分まで努力でカバーできるものです。

天才はなぜか生まれつきこの3つの才能をはじめから持っています。努力しなくてもはじめから出来るのが天才です。

サッカー元日本代表の礒貝洋光もサッカーをはじめたその日からリフティングが軽々とできたそうです。一緒にはじめた友達は当然ながら全然できなかったのに、なぜか礒貝洋光だけははじめからボールを落とさずリフティングを延々とできました。

しかし友達もサッカーの練習を毎日続けていくうちにリフティングが出来るようになり、礒貝洋光との絶望的な差を縮めました。

努力すれば天才との距離は縮まるのです。

ストーリー作りでも「感覚」や「ヒント集の充実」は努力でかなりカバーできる部分です。

天才はなぜか最初からそれらを持っていますが、持たざる凡人はあとから努力で追い上げればいいんです。

サッカーと違って練習法や努力の仕方がまだ確立しているとは言いがたいストーリー作りの世界。言い方を変えると、努力できている人が少ない世界でもあります。

それだけに努力が実ったときに得られる恩恵はサッカー界の比ではありません。ちょっと頑張るだけで一気にごぼう抜きもありえます。

ストーリー作りに魔法なし

どの世界でも勝つのは努力した人間と天才だけです。例外はありません。

スポーツ選手とか芸人の世界を見たらわかりますよね。

ストーリー作りの世界だけはなぜか魔法が存在していて、その魔法を知ることができたらスイスイ名作が作れてしまう、みたいなそんな都合のいい世界にはなっていません。残念ながら。

映画監督とか小説家とかマンガ家だって結局は現実から逃がれられません。面白いストーリーを作れるのは努力した人間と天才だけ。

ストーリー作りに魔法なし。

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