キュンキュンするような恋愛小説を書きましょう!
コツは胸キュンを生み出す黄金パターンを利用すること。他にもちょっとしたコツも存在しているので、そのポイントも外さないように書いていきましょう。
こうしたコツをこれから三部構成で解説していきます。かなりの記事ボリュームなので恋愛小説の書き方をガッチリ学べます。
まずはじめに黄金パターンを紹介します。第二部では書くときの重要ポイントについての解説。最後の第三部では実例を使っての解説。実際のプロット例も見ておけばどんなふうに恋愛ストーリーが出来上がっていくのか、どこで読者の心が動くのか、などをイメージできるはず。
書き方をしっかりマスターして、他の人が作れないような胸キュンストーリーを生み出しましょう!
「恋愛小説を書きたい。でもどんな話を書けばいいのかわからない」
そう悩んでいるなら黄金パターンでいきましょう。絶対すべらない代表的なパターンBest5を紹介します。
1位 ずっと会えない
2位 約束された破滅
3位 愛し合ってはいけないふたり
4位 最初は遊びだった
5位 三角関係
それぞれが実際どのようなものか恋愛映画を例に解説していきます。映画の方が単純でわかりやすいから学びやすいです。映画は120分ほどで観れてしまうから確認するのも簡単。
胸キュン黄金パターンを恋愛映画からバンバン盗んじゃいましょう。
最強の胸キュンストーリー。それは何らかの事情でふたりがずっと会えない状態で進んでいくラブストーリー。遠く離れていて会えないとか、誰かがジャマして会えないとか。
これをやられると読者は「ふたりが会えるようになって欲しい」と強く願うようになります。でも作者はなかなか会わせてあげません。
そんなムズムズする状態でクライマックスへ突入し、ふたりがついに会えたら胸キュン度は100%。凄まじい胸キャンパワーが生まれます。
『君の名は』が大ヒットしたのはこの「ずっと会えない」という手法をうまく使ったから。ふたりは体が入れ替わるけどずっと会えません。その会えない状況のまま彗星が落ちてくるクライマックスへ突入。観客は町の人が助かるかどうかよりも「ふたりが会えるようになって欲しい」という気持ちに引っ張られて大災害を見守ることになります。
『ゴースト/ニューヨークの幻』は主人公の青年が死んで幽霊になってしまう話。ヒロインに会いにいきたいけど幽霊なので彼女と接触できません。
そんなじれったい状況のまま物語はクライマックスへ。ヒロインは悪者に狙われ大ピンチ。主人公は彼女を無事救えるのか。ずっとふたりを会わさなかっただけにクライマックスシーンでのふたりの触れ合いは恋愛映画史上に残る名シーンになっています。
ずっと会えない理由をうまく考え出し、ご対面のシーンをロマンチックに仕上げれば、最強クラスの胸キュンが炸裂します。
1位の「ずっと会えない」の逆バージョンです。最初からふたりは会えるけど、崩壊のときが忍び寄ってくるというパターン。
難病ものラブストーリーなんかがわかりやすい例です。ふたりは愛し合っているのに、ヒロインは不治の病に。待ち受ける破滅までの日々を描いていくので、涙なしには見れない胸キャンストーリーに。
1位の「ずっと会えない」と同じぐらいの破壊力を持つ黄金パターンです。しかし、会えないパターンよりもこっちの破滅パターンの方が書きやすいです。だから競合作品がいっぱい。たくさんの人がこのパターンを利用しています。
それだけに他作品との差別化が重要になってきます。
この差別化を一番うまくやっている恋愛映画というのが実は『タイタニック』です。
豪華客船タイタニックに乗り合わせた男女が恋に落ちます。でもこの船が沈没してしまうことは観客全員が知っています。破滅は約束されているんですね。その道のりをうまく描いたからこそのメガヒット。豪華客船を舞台にしたことで街中のありふれた恋愛とは違う面白映画に仕上がっています。
もうひとつ例を挙げるなら相米慎二監督のデビュー作『翔んだカップル』
不動産屋のちょっとした手違いで同棲することになった高校生の男女の恋愛ストーリーです。学校にバレたら大変なことになります。その約束された破滅のときへ向かってストーリーは進んでいきます。
「恋の終わり」ではなく「夢のような同棲生活が終わる」という破滅を用意している点が大きなポイント。災害や不治の病で恋人が死ぬだけが破滅ではありません。工夫しだいでいろんな破滅を自分の小説に組み入れることができます。
破滅パターンというのは非常に強力だけど、書きやすいだけに大量に書かれています。それらとどう差別化するかが腕の見せどころです。
許されない恋愛は燃え上がります。障害が強いほどふたりの恋はヒートアップ。
不倫ものなんかがわかりやすい例です。愛し合ってはいけないのに、でもどうしようもなく相手を欲してしまいます。
『マディソン郡の橋』では夫や子供がいない4日間のあいだの不倫が描かれています。
社会制度の中で自然と生まれてきた掟があり、不倫というのはそれに対する反乱です。掟の枠には収まりきれない人間の欲望や想いをしっかりと描いていけば深いストーリーになります。
不倫以外にも愛し合うことが許されない状況はいろいろあって、昔からたくさんの映画や小説で取り上げられてきました。
古典ともいえる『ロミオとジュリエット』もそのひとつ。
昔テレビで大ヒットして何度か再ドラマ化や映画化もされた『高校教師』なども代表例。学校の先生と女子生徒の恋愛という題材は、他のいろいろな作品でも使われています。
許されない恋愛というのは「個人の想い」と「それを許さない社会」との戦いになります。その部分をしっかりと描くようにしましょう。
テーマ性の強い恋愛小説を書くことに適した題材です。少し難しさはありますが、深いテーマを持つ恋愛小説が書きたい人にはピッタリの黄金パターン。
意外と高い胸キュン効果を見せるのが遊びからスタートする恋愛。
主人公は最初違う目的でヒロインに近づきます。でもヒロインと接するうちに彼女の良さを知って好きになってしまうというパターン。
『幸福の黄色いハンカチ』は実はこのパターン。
高倉健は刑務所を出て、別れた妻に会いに行こうとします。もし自分を待っていてくれてるなら玄関先に黄色いハンカチを出しておいてくれと。でも「無理にきまってる。やっぱりやめておこう」と何度か弱気になります。
そんな高倉健を励ますのが道中で出会った武田鉄矢と桃井かおりの若者コンビ。『幸福の黄色いハンカチ』という映画は高倉健のストーリーだけではなく、武田鉄矢と桃井かおりの恋愛の話も挿入されています。
武田鉄矢は当初、性欲丸出しで桃井かおりをナンパ。彼女を車に乗せたのも性欲目的。桃井かおりはそんな武田鉄矢に少しウンザリしています。
しかし一緒に旅をすることになった高倉健をふたりで励ますうちに、武田鉄矢は愛を求めるようになります。
最初は遊びでしかなかった桃井かおりとの関係が、ラストではきれいに恋愛関係へと昇華しています。こうした変化をしっかり描いていくと高い胸キュン効果が生まれます。
『ローマの休日』なんかもこのパターンです。
新聞記者の男は最初ローマの街を遊び歩くお姫様オードリー・ヘップバーンをスキャンダルの道具にしようとしていました。しかしふたりでローマを散策するうちに恋が芽生えていきます。
主人公の間違っている姿と、それが正されて恋が生まれてくる変化。これをしっかり描きましょう。この変化にこそ胸キュンが詰まっています。
ふたりの物語を描くのではなく、もうひとりライバルが加わって3人の恋愛模様を描きます。
ふたりの関係を描くだけでもむずかしいのに、三角関係では3人の関係を描かないといけません。それだけに少し難易度は高し。3人の人間が存在することにしっかり意味を乗せないと胸キュン効果は発動してくれません。
主人公には恋敵が存在しているわけですが、この恋敵との関係をしっかりと描きましょう。恋愛対象とのラブストーリーだけでなく、恋敵との友情やライバル関係も等しく描いていく感じ。三人の関係が正三角形のようになるのが理想です。
『タッチ』なんかがわかりやすい例です。双子の兄弟はふたりとも幼馴染みのミナミちゃんに恋をしています。主人公の恋愛ストーリーだけでなく、双子の弟との関係もしっかり描いたことがこのマンガを成功に導きました。
『冒険者たち』でも、ひとりの女性を愛したふたりの男の青春が描かれます。ヒロインの女性はまるで青春の象徴のように描かれています。これが青春の終わりとリンクして後半かなり効いてきます。
恋敵がただ存在しているだけではダメ。3人の物語をしっかり描けないと三角関係はあまり高い効果を生みません。
紹介した黄金パターンのどれかを選んで、あとは具体的なプロットを作っていけばいいワケですが、書いていくときの注意点を3つほど紹介しておきます。
恋愛小説の書き方のちょっとしたコツとでも言うべきものです。
こうしたコツに気づかないまま書いている人も多いので、知っていたら他の人たちに差をつけられますよ!
恋愛小説を面白くする一番のコツは、ふたつのストーリーを組み合わせること。
恋愛の話1本でいくのではなく、何か別のストーリーと組み合わせます。すると非常に変化に富んだストーリーに仕上がります。
実は恋愛1本に絞ったストーリーというのはかなり難易度が高かったりします。どんなシーンを書けばいいか意外と思いつきません。そのせいで派手な事件やショッキングな出来事の連続になってしまいがち。レイプとか、流産とか、仲間の自殺とか。
こうしたショッキングな事件の連打は小説を書き慣れていない初心者がよくやる失敗です。ストーリー展開が思いつかずただの悲劇の連打になってしまいます。
だからそうならないようもうひとつ別のストーリーを用意します。別のストーリーを加えて2枚合わせの構造にするだけでストーリーは面白いように動き出し、恋愛模様も生き生きしてきます。
一番わかりやすい例が『タイタニック』です。恋愛1本に絞ったストーリーではありません。豪華客船が沈没する話と組み合わせています。街中で出会ったふたりのラブストーリーでは出せないようなドラマチックな展開を見せてくれます。
他の人たちが街中での恋愛模様を書いている中で、もしひとりだけ沈没する豪華客船での恋愛模様を書いている人がいたら、ものすごく目立つし、ものすごく光ります。
『ゴースト/ニューヨークの幻』にしても恋愛だけを描いた映画ではありません。死んで幽霊になってしまった男が苦労する話とセットになっています。この苦労話と恋愛要素がうまく組み合わさっています。
『翔んだカップル』も恋愛と並行して少年の成長が描かれます。主人公の少年とヒロインは不動産屋の手違いで一軒家にふたりだけで住むことになります。恋愛だけではなく、秘密の同棲生活が学校にバレないようにしないといけない話もセットになっていて、ふたりの衝突と成長も描かれた青春映画になっています。
ふたりの暮らす家がユートピアとして描かれています。子供でいられるおとぎの国みたいな感じ。そこからの巣立ちが描かれていきます。
同棲生活の終わりに向かってストーリーは進んでいきますが、それが巣立ちを意味しているので深みのある青春ストーリーに仕上がっています。
高校生の恋愛をただ描くだけよりも、こうした成長物語などと組み合わせた方がストーリーが面白くなります。主人公の成長物語を恋愛と並行して描いていく手法は王道だし、そんなに難しくはないのでオススメ。
『タイタニック』みたいに災害と組み合わせるのも書きやすい王道パターンです。ふたりで難局を乗り越えることで恋模様にも変化が生まれます。
災害でなくても、悪者に狙われるような単純な形でもいいです。『ゴースト/ニューヨークの幻』はこのパターン。ヒロインが悪者に狙われて大ピンチ。でも主人公は幽霊になってしまって彼女を助けることができない。どうすればいいのかというプロットになっています。
難病ものラブストーリーのように病気との戦いをちょっと加えておくだけでもいいです。
ストーリーを面白くするために何か別の話とセットにしましょう。話が広がって起伏のある面白いストーリーになります。
恋愛ストーリーを書くとき絶対に忘れてはいけないのは、男らしさ・女らしさを描くこと。
男女平等が叫ばれて久しいけど恋愛ストーリーではそんなもの無視。男と女は違います。まったくの別物。その違いをしっかり描いてこそ恋愛小説です。
「男らしさ・女らしさが何なのかわからない」そういう人はまずは単純に考えましょう。男は兵隊、女はお母さんです。
悲しいかなオスという生き物はただの戦闘要員です。巣や群れを襲ってくる外敵と戦って死んでくれればいい存在。
一方、メスの方は子孫を産んで育てるだけの出産要員です。
神様がそういうふうに人間を作ったのだから仕方がありません。男女平等がどうのこうの言われる時代になってもこの事実はくつがえりません。本能の部分にずっと残り続けている人間の宿命です。
そもそも男と女が恋愛するのも子孫繁栄のためでしかありません。
恋愛小説を書くときはこうした現実をごまかしてはいけません。男は兵隊、女はお母さんです。兵隊として生きている男と、母親として生きている女をしっかり描きましょう。
男キャラを描くならちゃんとしたオスとして描かないといけません。ただやさしいだけの男では異性として認定されません。やさしいだけの男なんて「いい人だけど、ごめんなさい」といって女にフラれるだけ。それが現実です。
女性のために自己犠牲の精神で戦う男の姿を書きましょう。これが恋愛小説独特の胸キュンを生み出します。
女性を書く場合はお母さんな感じを出しましょう。子供をなぐさめるような感じで男性をやさしく癒やすシーンを用意します。
男は女のために戦う。女は男を癒す。
これが恋愛ストーリーに胸キュンを生み出します。他のジャンルではこうした要素はあまり意識しなくていいけど、恋愛小説では絶対条件。
戦う男と癒やす女をしっかり描きましょう。
しかし両方とも書こうとすると意外と難しいので、どちらか片方でもいいです。女性に読まれることを想定した恋愛小説の場合は、戦う男をしっかり書くようにします。逆に男性読者をターゲットとした場合は、癒やす女をちゃんと書くことが大事。
異性の方を光らせるというのは定番ともいえるセオリーです。読者とは違う異性の方をしっかり書きます。
たとえばアニメなんかを例に考えればわかると思います。オタク男子を対象に恋愛アニメを作るなら、大事なのは女子キャラの方です。観客がその女子キャラに惚れてしまうぐらいしっかり光らせれば作品は成功します。
少女漫画なら逆ですね。男キャラを魅力的に作らないといけません。
とくに小説は映像がないため男らしさや女らしさの演出はものすごく大事。
映画やTVドラマのように映像があるなら、人気俳優でも出しておけばなんとかなります。でも小説には映像がありません。男を感じさせる雰囲気や女らしさを感じさせる雰囲気を演出によって生み出さないといけません。映画や漫画以上に男らしさ・女らしさには気を配る必要があります。
異性
異性らしさをしっかり描いて光らせる。
主人公
変化していく恋心をしっかり描写。
異性らしさをしっかり書いていきましょう。「戦う男」の描き方として一番わかりやすい例は『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオ。船が沈没することになるためヒロインを必死に助けようとします。最後はヒロインの命を救うために自分の命さえ犠牲にしようとします。まさに戦う男、まさに兵隊。自己犠牲の精神がちゃんと描き出されています。
『ゴースト/ニューヨークの幻』もわかりやすい例です。自己犠牲とまではいかないけど、こちらもピンチのヒロインを救うために男が必死に戦います。
チャップリンの恋愛コメディー映画『街の灯』もわかりやすいです。盲目の女性に恋したチャップリンは、彼女の目の治療費を稼ぐため奮闘します。目が治ってしまったら恋は破滅するのに。
彼女は目が見えないので、ちょっとした勘違いでチャップリンのことを大金持ちの王子様だと思い込みます。でもチャップリンは本当はただの貧乏人です。バレたら恋は終わります。でもそれでもいいからとチャップリンは彼女の目を治そうとします。自己犠牲のわかりやすいお手本です。
男が女のために戦うというのは最強の胸キュン演出なので、何を書くか迷ったらもうこのプロットでいきましょう。
対して、女性が男を癒やすタイプのストーリーの方は少し難易度が上がります。もう少し複雑な感じ。
わかりやすい例でいえば『幸福の黄色いハンカチ』などがあります。
傷害事件で刑務所に5年ほど入っていた高倉健が別れた妻に会いに行くストーリーです。
「もし許してくれるなら玄関先に黄色いハンカチを出しておいてくれ」と手紙で伝えて、それを確認しに行く話。しかし自信のない高倉健は確認に行くのをやめそうになります。もう別の男と再婚しているかもしれないし、懲役帰りの自分を受け入れてなどくれないだろうし。
そうやって迷いを抱えながらも、途中で出会った若い男女の車に乗せてもらって家へ向かいます。
高倉健は弱気になっています。でももし別れた妻がずっと待っていてくれたら、癒されますよね。懲役あがりの男を待ってくれている人なんてお母さんしかいません。完全に母親です。
恋愛小説ではこの慈愛をブチかましてヒロインをお母さんにしないといけません。
男は兵隊。女はお母さんです。さらには「それを必要としている感じ」もキャラに加えておきましょう。つまり女性キャラを作るなら、お母さんな感じだけではなく、兵隊に守ってもらうことを必要としているようなか弱さもストーリー中で見せます。
この両方を持つ女子キャラにすることで男性読者のハートをわしづかみにします。
男性キャラを作るときは逆ですね。兵隊な感じだけではなく、お母さんに癒してもらわないといけないような問題児っぽさも演出しておきます。女性からの癒やしを必要としている男キャラです。こうしておくと女性読者をもっと魅了できるようないい男キャラになります。
恋愛小説で大事なのはふたりの距離感です。
ストーリー序盤でいきなり近づき過ぎてはいけません。前半ではふたりの距離を離しておいて、それが後半に入ると近づいていくようにします。盛り上げるための基本です。
ストーリーの前半は反発し合っているぐらいで調度いいです。後半になるとそんなふたりのあいだに恋が芽生えていきます。
こうしたセオリーは言われなくてもちゃんと出来ている場合が多いです。でも物理的な距離感をうまく使えている人は少ないです。気持ちの距離感だけでなく、物理的な距離感も演出してみましょう。
仕事が忙しくて恋人となかなか会えないみたいな展開ですね。会いたいのに仕事のせいで会えません。
主人公も「会いたい」と思うし、小説を読んでいる読者だって「会えるようになって欲しい」という気持ちになります。これが感情移入を生み出します。
黄金パターン第1位の「ずっとふたりを会わさない」という演出がちゃんと出来たなら、凄い胸キュン効果が生まれます。小説がはじまってからずっと会わさないわけですから。これが出来るなら最強です。
しかしふたりをずっと会わさないストーリーというのはやはりなかなか難易度が高いです。だからずっとではなくてもいいです。ストーリー中盤あたりで少しだけ会えない期間があるだけでも胸キュン効果はかなり出ます。これをやってみましょう。
恋愛映画の古典『男と女』にも物理的な距離感が出てきます。ストーリー後半で主人公は自動車のレースに出場して見事入賞します。その結果をテレビで知ったヒロインは主人公にお祝いの電報を送り、ついでに愛の言葉を添えて自分の恋心を彼にはじめて伝えます。
この愛の電報に主人公は喜び、レースが行わていた街から彼女の元へ飛んで帰ります。少しずつ恋を育んできたふたりがついにカップルになる瞬間です。主人公はこみ上げてくる熱い気持ちを必死に抑えながら夜のハイウェイを飛ばします。
遠く離れたヒロインのもとへ車を飛ばすこのシーンが『男と女』という映画の中でいちばんドキドキします。見ている観客は「早く再会して欲しい」と思わずにはおれません。
そしてついに到着して顔を合わせる主人公とヒロイン。映画中で最大の見せ場が訪れます。
ふたりの間に物理的な距離を置くことで読者をじらし、ふたりが近づくシーンで大きなカタルシスをブチかまします。
ひとつだけ注意する点は、物理的な距離を作ってふたりを会えなくしたときは、前と後で気持ちの変化を付けるようにしてください。
会えなくなる前も後も同じ気持ちではダメ。読者はワクワクしてくれません。『男と女』でも会えなくなる前はまだ恋人という関係までは進んでいません。それが会えないあいだに大きく進展します。おめでとうの電報を送るときヒロインは愛の気持ちを伝えます。
この大きな進展があるからこそ映画を見ている観客は「早く会えるようになって欲しい。ふたりはどんな感じで再会するのだろう。どんな言葉を交わすのだろう」そういう期待感を膨らませながら再会のときを待ち望んでくれます。
しかしもし心の変化が何もなければ、ただの間延びしたシーンにしか感じません。「いちいち車でハイウェイを走るシーンなんて見せなくていいよ。とっとと再会させろよ」ぐらいにしか思ってくれません。
TVドラマとかでもよくありますよね。主人公が出張で地方に出かけてヒロインとしばらく会えなくなるというのは。しかし会えない期間に新たな気持ちが芽生えて来たりもしないため、出張から戻って再会しても今ひとつ盛り上がりません。
ふたりを会えなくしたときは必ず心の変化を入れましょう。これは鉄則中の鉄則です。
これまで解説したきた「黄金パターン」と「3つのコツ」を使えば、甘々胸キュン恋愛小説ができあがります。
最終パートのこの第三部では実際の創作例を見ていきます。
黄金パターンなどを実際どのように活用するのか、それがどんなふうに効くのか。作品例を見ることで、黄金パターンや3つのコツによってストーリーがぐっと面白く仕上がることが実感できるはずです。
まずは初心者がやってしまいがちな「ありがち失敗例」の方を先に見せておきます。これを黄金パターンや3つのコツで改良していきます。
< ありがちな失敗例 >
女子高生の結衣は、不良少年の亮と席が隣同士になってしまう。
「今度の雪まつり一緒に行こうよ」亮が誘ってきた。結衣はOKする。
ふたりで雪まつりを堪能した。「あー楽しかった」めでたしめでたし。
全然面白くないストーリーですよね。「だから何?」と言いたくなります。
しかしよくある失敗例です。男女の恋愛模様やデートの様子が描かれるけど、ストーリーに意味がありません。これにちゃんと意味を乗せていくと、ストーリーが劇的に変わります。
さっそく改良を加えてみましょう。
恋愛の話1本に絞るのではなく、別のストーリーと組み合わせてみましょう。恋愛とは違う別のストーリーが加わるだけで急に話が生き生きと動き出します。事態がどんどん変化していくから主人公の恋心もすごく動くようになります。
たとえば次のような別ストーリーを加えます。
結衣は不登校になっていた時期があり、留年する可能性が濃厚だった。だからもう学校は辞めようと思っていた。高校生活をもうあきらめていた。
クラスにもいまいち馴染めず、学校に何の楽しみもなかった。勉強以外に目的がない、そんな高校生活。大学へ進学するためだけに通う場所。
それなら高校を中退して、自宅で勉強して大学に行けばいいのではないか。結衣は有名進学校内にあっても成績だけはトップクラスだった。
しかしそんなある日、担任の美術教師が「ボクの手伝いをしてくれたら進級させてあげる」そう言ってきた。まさかの進級できるチャンスだ。
クラスのみんなはこの担任のことを陰で変態教師と呼んでいる。目がいやらしい。何か変なことをされるかも。でもうまくやれば2年に進級できるのではないか。
結衣は美術室の整理を手伝ったり、備品の買い出しに同行したりして、なんとか留年を回避しようと頑張る。
恋愛1本で行くのではなく、こういう別のストーリーと組み合わせます。16歳の女子高生が男子生徒とただ恋愛をする話ではなくなります。どちらかというと変態教師の命令を遂行することで進級を目指す話になります。
でもそんなストーリーの裏には、席が隣同士になった不良少年との恋愛ストーリーが仕込まれています。
席替えのあとも結衣の隣の席はずっと空席だった。そこは亮の席で、彼は停学で2週間ぐらいは学校に来ていない。
そんな亮が停学明けで久しぶりに学校に戻ってきた。結衣は亮と一度も話したことがないので怖かった。クラス内でも彼の評判はすごく悪い。乱暴だし、教師などにも反抗的だし。
結衣はなるべく亮の方を見ないようにして過ごした。彼も話しかけては来ない。しかしある日をさかいに事態が急変する。
こんな感じで裏でラブストーリーも展開していきます。
最初からラブラブ甘々ではつまらない小説にしかなりません。ふたりのあいだに距離を作っておきましょう。恋愛小説では距離のコントロールが重要。
ふたりは席は隣同士だけどまったく交流がありません。さっそく距離を動かしていきましょう。
留年を回避する話と、不良少年とのラブストーリー。2つの物語を用意していますが、まだ2つのストーリーは関連性がありません。黄金パターンを利用して2つのストーリーに関係性を持たせましょう。
亮は評判がとにかく悪い。変態教師だって「あいつはクズだ」みたいに言っている。
変態教師は亮を退学に追い込みたいようで「あいつが退学になる証拠をつかんでこい」と結衣に命令。それに成功したら進級させてやると。
進級したい結衣は言われたとおり証拠写真を撮ろうとする。
どこかでタバコでも吸ってないだろうかと思い、休み時間に亮を尾行する。無免許でバイクにでも乗っていないかと思い放課後も尾行。
しかし決定的な場面には遭遇しない。ぜいぜい駅前で他校の生徒とにらみ合いになっているぐらいだ。あるいは本屋でエッチな本を立ち読みしているとか。
そんなある日、急に亮が話しかけてくるようになる。どうやら尾行がバレていたようだ。でも亮は「結衣に惚れられている」と勘違いしているらしい。このガリ勉女は自分に気があるから付きまとっているのだと。
こんな感じで2つのストーリーをより合わせます。
結衣にとって亮は最初のころは退学に追い込む標的でしかありません。
オードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』と同じパターンですね。黄金パターン第4位の「最初は遊びだったパターン」を組み込んでいます。結衣は別目的で彼に近づきます。
しかし『ローマの休日』がそうであったように、結衣も証拠写真を撮るため亮を尾行することで、だんだんと彼の人間性に触れていきます。そしてやがてそれが恋心に。
序盤あたりで一発目の胸キュンエピソードを何か入れておきましょう。
結衣の通う高校は県内屈指の進学校。ミスマッチな不良少年・亮はクラスで完全に浮いている。だからいつもひとりで行動していて、いつも怖い顔をしている。
しかし放課後に尾行しているとき、亮が地元の友達と話している場面に遭遇する。
笑っている。学校では見たことのない彼の笑顔。とても楽しそう。
はい来ました。笑顔に胸キュンパターンですね。
いつも怖い顔をしていた彼。でも結衣は初めて亮の笑顔を見てしまいます。これが恋のスタート地点となります。このシーンはしっかり描写しておきましょう。序盤の見せ場です。
結衣は亮の笑顔をはじめて見てしまったし、亮は「隣の席の女に惚れられてしまった」と勘違いして話しかけてくるようになりました。
恋が動きはじめます。
こんな感じで2つのストーリーが絡み合いながら物語が展開していきます。
表向きは留年しないよう頑張る話のように見えます。結衣は亮を監視しながら彼を退学に追い込む証拠写真を撮ろうとします。さらには変態教師から言われて画材の清掃を手伝ったり、絵のモデルになってくれと言われてモデルになったり。
その裏でラブストーリーも展開していき、亮との関係が少しずつ動いていきます。
証拠写真がなかなか撮れないので結衣は困っていた。
そんなある日、変態教師が別のお願いを言ってきた。「今度部屋を模様替えするので、自宅に手伝いに来て欲しい」
家に来いと言っている。模様替えを手伝えと。そしたらもう進級させてやると。でもさすがに怖いので返事を保留する。
このやり取りを亮に盗み聞きされてしまう。亮は「オレが用心棒としてついていってやる」と言う。何かあったときのために近くの公園で待機していてくれるらしい。「何かされたらすぐ電話しろ」と。
信じて大丈夫なのだろうか。
こんな感じで変態教師から家へ来るよう誘われます。亮は不測の事態に備えて待機しておいてくれるそうです。
結衣と亮の関係が少しずつ動いていきます。結衣は亮を怖がっていて、話しかけて来るようになったことにも困惑していました。でも留年しないよう手伝ってくれると言ってます。
「結衣に惚れられた」亮は勝手にそう勘違いしています。退学に追い込む証拠を押さえようとしているだけなのに。
結衣はなんだか申し訳なく思えてきます。自分のやっていることにも疑問が生じてきます。彼を退学に追い込むのではなく、自分が学校を辞めればいいのだ。高校生活に何も意味なんて見い出せないのだから。
「彼は悪い人ではないのかも」という気持ちも湧いてきました。
距離が動き始めたので、それをちゃんと描写していきましょう。恋愛小説では主人公の心の変化を丁寧に描写していくことがとにかく大事。
これまでは話しかけられても迷惑に思っていただけ。でも次に話しかけられたときは反応を少し変えてみましょう。
亮に授業中に話しかけられる。教科書の中でわからない部分があるらしい。
仕方ないので結衣は教えてあげる。
教え終わったとき「髪、切った? 短いのもかわいいな」亮が急にそんなことを言う。ふたりの目が合う。亮に顔を寄せる感じになっていたので顔がすぐそばに。
結衣は慌てて身を引き、居住まいを正す。亮の方をチラッと確認してみると、彼は何も気にしていないようで、教えてあげた部分を熱心に確認している。
男性から「かわいい」と言われるのは必殺の胸キュンセリフです。そんなこと言われたら彼を異性と意識せずにはおれません。「頭がいいね」とか「頑張ってるね」とかではなく、女性らしい部分をほめられるというのがポイント。
小説の前半ではこんな感じで心の変化をしっかり描写していきます。他にも結衣がちょっと緊張した感じで亮と会話するシーンとか、校庭にいる亮を見つけて目で追ってしまうシーンとか。
こうした微妙な変化の描写こそが胸キュンにつながります。
中盤あたりまで来たらこの距離感に劇的な変化を加えてみましょう。亮に対する評価が激変するような出来事が欲しいですね。主人公の気持ちが大きく前進する胸キュンエピソードを用意しましょう。
「変態教師に色目を使って留年を回避しようとしている」そういう評判がクラス内に広まる。
そのせいで結衣はクラスのカースト上位連中から体育館の裏に呼び出されてしまう。結衣が以前不登校になったのも彼女たちのせいだ。
体育館裏に行ってみると主犯格の女と、彼女の取り巻き男子が3人ほどいた。
上層部たちに詰め寄られてピンチの結衣。
そこに亮が通りがかる。
亮はあいだに割って入ってきて、結衣を守ってくれる。上層部連中と亮は言い争いになる。取っ組み合いのケンカにでもなったら彼は退学になってしまうと思い、結衣はあわてて止めに入る。
中盤の一番の見せ場です。亮に助けられます。こうしたシーンが恋愛小説で効くのは、男らしさを見せるシーンになっているから。「戦う男の姿」が描き出されています。
この出来事をさかいに結衣は亮を見直し、彼を男としてはっきり意識しはじめます。そしてこれは読者も同じ。読者だって亮を男として強く認識するようになります。
ついでだから「癒やす女」のエピソードも作っておきましょう。助けてくれた事件を挟んでふたりの仲は急速に進展します。ここで癒やす女のエピソードも入れておきましょう。
女らしさをしっかり描いておけば亮に惚れられる理由にも説得力が出ます。
結衣は亮がパチンコ屋に入って行くのを目撃する。証拠写真を撮れば彼を退学に追い込める。画像を変態教師に渡せばめでたく進級だ。
でも結衣は写真を撮ることができず、パチンコをしてる亮を遠くからそっと見守る。
しばらく見ていたら亮に見つかってしまい、パチンコ屋の隣の公園で少し話すことに。
亮は地元の友達に勧められ進学校に来たけど、そのことで悩んでいた。デタラメな自分の生活にも疑問を持っていた。不安を口にする亮を見るのははじめてだ。結衣はやさしい言葉で彼をなぐさめる。
停学をくらったとき亮は、一度は学校を辞めようと考えたようだ。今でもどうするべきか少し迷っている。そんな亮を結衣はやさしく励ます。彼に頑張って欲しかった。何かを見つけ欲しかった。でもなんだか自分に言っているような気がした。
翌日学校に行くと、クラスのみんなが亮の悪口を言っていた。結衣は「彼はそんな人じゃない」と大声で反論してしまう。
みんなに忌み嫌われている無法者を受け入れるエピソードです。結衣だけはまるでお母さんのように亮をやさしく包み込んであげます。
戦う男と同様に、癒やす女も恋愛ストーリーではものすごく効きます。
まだ中盤です。「めでたしめでたし」みたいになってしまっては面白くありません。ストーリーを盛り上げるために一度ふたりの心に距離を作りましょう。なんでもいいので仲が一度壊れるようなエピソードを用意します。
亮が他校の女子生徒とバイクで二人乗りしていて、結衣がそれを目撃してしまう。そういうエピソードでいいです。亮としては以前関係のあった娘と街で偶然会って、その娘を家まで送って行っただけです。結衣の完全な誤解。でも結衣はこのあいだパチンコ屋でいろいろ悩みを打ち明けられたこともあり、女遊びをしている亮に裏切られたような気持ちになって落ち込みます。
この出来事が原因で結衣と亮はケンカしてしまいます。このケンカのとき結衣は言ってはいけないこともつい言ってしまいます。亮を退学に追い込むため証拠写真を撮ろうとしていたことを。惚れてなんかいなかったのに亮が勝手に勘違いしたことを。
こうしてふたりは離れ離れに。
彼が他の女の子といるところを目撃してしまうというエピソードは、大昔から使われてきた王道胸キュンエピソードです。つい嫉妬してしまいますよね。乱れる主人公の心情を書くことで面白さが出るし、事態を動かしていくいいキッカケにもなります。
ふたりの心に距離ができてしまいました。
ついでだから物理的な距離も作っておきましょう。
ケンカした翌日から亮は登校して来なくなる。
あんなことを言ってしまったせいだ。隣の空席を見つめながら結衣は不安に襲われる。亮はもう二度とこの席に戻って来ないのではないか。このまま退学してしまうのではないか。
亮と会えなくなってしまった。会えなくなってはじめて結衣は亮の存在の大きさに気づきはじめる。
それと同時に結衣は、最近学校へ明るい気持ちで登校できていたことにも気づく。家を出る前は鏡の前で身なりをチェックしたりしていたし、通勤電車の窓から見える景色もなんだかキラキラ輝いて見えていた。
でも亮は学校に来なくなった。
放課後結衣は亮の地元へ行ってみる。彼にあやまりたかった。でもどこにもいない。あのパチンコ店ものぞいてみる。でもそこにもいない。
こうした会えない状態はベタな演出ながら効果抜群。読者は「会えるようになって欲しい」と強く望み、ストーリーにどハマりしていきます。
コツは第二部でも解説したように、会えなくなる前と後で心の変化をつけること。亮と会えなくなったことで結衣は自分の恋心に気づいていきます。
こうした心の変化を入れるからこそ読者は「会えるようになって欲しい」と思ってくれます。気持ちに大きな変化が起きた結衣が彼とどんな感じで再会するのか、それを想像して待ちこがれてくれるようになります。
さあいよいよクライマックスです。
2年生に進級したいという気持ちが本当に湧いてきた結衣は、変態教師の模様替えを手伝うためひとりで変態教師の自宅へ出掛けていくことになります。亮とはずっと会っていません。ひとりで行くしかありません。
ストーリーの最初のころの結衣は高校生活に何の希望も持てずにいました。しかし「高校に通いたい」という気持ちを恋愛を通して獲得していきます。主人公が自分の殻を破って自分の限界を超える瞬間です。クライマックスシーンを作るときはこのように主人公が自分の限界を超えるシーンを作りましょう。ストーリー作りの基本です。
クライマックスの作り方をもっと詳しく学びたい人は当サイトで公開している基本講座のページも参考にしてください。
結衣はひとりで変態教師の自宅を訪れます。
しかし部屋の模様替えはやはり誘い出すためのただの口実で、変態教師の罠でした。自宅には変態仲間が他に2人来ていました。結衣、大ピンチ!
変態教師たちに服をビリビリに破られる結衣。変態3人組は画材を手に取り、下着姿になった結衣を一心不乱に写生しはじめる。
うかつに行動したことを結衣は後悔する。2年生に進級したかっただけなのに、こんなことになるとは。
そこに亮が登場。どうやらクラスメイトから「結衣がひとりで変態教師の家に向かった」と聞いたらしい。
亮は変態男3人をやっつけて結衣を助け出す。
下着姿になってしまった結衣に亮は「これ着とけ」と自分の上着を渡してくれる。
恋愛小説のクライマックスシーンです。男らしさを存分に描きましょう。恋愛の話1本で行くのではなく別のストーリーと組み合わせた効果がこのクライマックスでもあらわれています。結衣が変態教師の家に行って大ピンチという展開を生み出せました。
別のストーリーをうまく組み合わせて利用すれば、こうしたクライマックスシーンを作り出すことができます。
『タイタニック』みたいに豪華客船の沈没という大袈裟なものでなくてもいいです。別のストーリーを活用すれば盛り上がるクライマックスシーンなんていくらでも生み出せます。
亮が助けに来てくれました。まさに男です。兵隊です。男が女を救出に来るこういうクライマックスシーンは作りやすいので初心者にもオススメ。書きやすいわりには絶大な効果をあげてくれます。
結衣はこうして無事助け出され、事件は解決に向かいます。警察沙汰にしない代わりに結衣は2年生への進級を約束されます。めでたしめでたし。
あとはラストシーンです。ここはダラダラやってはいけません。一気に終わらせましょう。
借りた上着を羽織った結衣。シャツ1枚姿になった亮。ふたりは並んで駅への道をとぼとぼ歩く。
「ごめんなさい」
結衣はやっとあやまることが出来た。でも亮は不機嫌そうな返事しかしない。もっといろいろ伝えたいことがあったけど結衣はそれ以上なにも言えなくなり、下を向くしかなかった。
そのままとぼとぼ歩く。
「今度の雪まつり、一緒に行かないか」亮がぶっきらぼうに誘う。
結衣は顔を上げる。亮は目をそらして前方に顔を戻し、歩きつづける。頬が少し赤らんでいる。結衣は急いでカバンからスマホを取り出し、彼の横顔を写真に撮った。
こんな感じで終わります。
最初の失敗例を思い出してください。「雪まつりに行こう」と誘うセリフの重みが全然違いますよね。
意味が乗ったうえで亮が結衣をデートに誘っているから重みがあります。どんな気持ちで亮が雪まつりに誘っているかを読者は感じ取ることができます。その誘いを結衣がどんな気持ちで受け止めたかも読者は感じ取れます。
読者の心に響くというのは、こういうことです。主人公たちの気持ちが読者にもちゃんと伝わるようにストーリーが作られています。
カッコいい名言とかオシャレな告白シーンとかはいりません。「雪まつりに行こう」というシンプルなセリフでいいです。
とにかくどんな気持ちで言っているのか読者にもわかるようにする。もうこれがすべて。これが出来るかどうか。
登場人物の気持ちが読者にも伝われば、心に響くストーリーになります。
男と女の恋愛話をただちょこちょこ書いても読者の胸には響きません。意味を生み出しながら恋愛ストーリーを展開していくようにしましょう。
具体的に何をやればいいかはずっと解説してきたとおりです。
黄金パターンと3つのコツ。これをしっかり押さえながら書いていけば心に響く恋愛小説になります。胸がキュンキュンするような恋愛小説をさっそく自分でも書いてみましょう!
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