小説や漫画を書いてみたいと思っている初心者のために、書き方のコツを紹介します。
やることはたった3つの工程だけ。
「はじめて小説を書く」そんな人でも無理なく進められる3工程です。初心者が書いたわりにはそこそこ面白いストーリーに仕上がっているはず!
書くジャンルは自分の好きなものでいいです。恋愛ものが好きな人なら恋愛小説を書きましょう。「ピストルでバンバン撃ち合うような映画が好き」そういう人なら、そういう小説を書けばいいです。
自分の好きな映画や最近読んで感動した小説などを思い浮かべてください。それに似たストーリーを書けばいいです。自分の好きなジャンルがそのまま自分の書きたいジャンルであることが普通です。
楽しんで書きましょう。
長さ、ページ数は短めがいいです。初心者は壮大なストーリーなんていきなり書けません。
映画ぐらいの長さがベスト。文字数でいえば5万文字ぐらい。
もっと短い短編みたいな小説が書きたい人は短編で構いません。「短編なんて書いても楽しくなさそう」そう感じるなら短編はやめておきましょう。書きたくないものを無理に書く必要はありません。短編だと物足りなさを感じてしまう人って結構多いです。
映画ぐらいの長さならそうした心配もありません。書いていて楽しいし、そんなに壮大でもないので初心者だって書けます。
まずは映画を1本撮るような感じで書いてみましょう。
やることは3つだけ。紹介する3工程を順番にこなして行きましょう。
まず一番はじめにやることは、自分が本当に書きたいと思えるようなシーンを考えること。
物語の中で一番盛り上がる山場みたいなシーンを思い浮かべてください。クライマックスの少し手前のシーンでもいいです。山場に向かってガガガと盛り上がっていくような場面ですね。
とにかく自分が書きたくなるような盛り上がるシーンをまず考えます。
主人公がヒロインを助けに行こうとしているようなシーンでもいいです。
ふたりのガンマンが荒野で決闘するようなシーンでもいいです。
森の奥からモンスターがあらわれて、みんなが逃げまどってるようなシーンでもいいです。
とにかく「このシーンを書きたい!」と思えるものを用意しましょう。
なかなか浮かんでこないようなら好きな小説や映画から連想してみてください。その映画や小説のどんなシーンに感動したでしょうか。どんなシーンにワクワクしたでしょうか。どんなシーンが心に残っているでしょうか。
思いついたシーンが面白いかどうかは気にする必要ありません。大事なのは自分が書きたいかどうかです。小説を書くという作業はかなり面倒で時間もかかります。漫画なら絵だって描かないといけないので更に面倒。
この面倒な作業を可能にするものは「書きたい」という情熱しかありません。
ストーリーはあとからでも面白くできます。でも情熱だけはあとからどうにかなるものではありません。
「このシーンが書きたい!」と強く思えるものをまず見つけましょう。
書きたいシーンが用意できたら、次はそのシーンに至った原因を考えます。
何か原因があるからそのシーンに至りました。
この原因は「主人公が何かを間違っていたから」ということにします。主人公が大事なことを見落としていたからこんな大変な事態を招いてしまったんです。
たとえばヒロインの救出に向かうシーンを書こうと思うなら、そんな事態を招いてしまったのは主人公の責任です。何かを間違っていたからヒロインは困難に陥り、主人公は助けに行かないといけなくなったんです。
ガンマン同士が対決するシーンも同じです。強敵と対決しないといけなくなった原因は主人公の何らかの見落としが原因です。
モンスターに逃げ惑うシーンも同じ。こんな事態に陥ったのは主人公のせいです。
「主人公は何を間違っていたのか。何を見落としていたのか」それを考えましょう。
たとえばヒロインがピンチに陥ってしまった原因の例としては、主人公は彼女をあまり大事に思っていなくて雑に扱っていたとか。彼女の身に迫る危険にまで注意がまわりませんでした。そのせいでヒロインはピンチに陥り、主人公は助けに向かうはめに。
物語というのは結局のところ「間違いが正される話」のことです。主人公が何かを間違っていて、それが物語のなかで正されます。
ストーリーを通して主人公の間違いが正されるからこそ、ストーリーに意味が生まれます。
現在やっているこの2工程目は、この意味を作っていく作業です。主人公が何も間違っていないとストーリーに意味が生まれず面白くなりません。
物語の主人公というのは必ず何かを間違っていないといけません。それが戦いのなかで正されないといけません。
主人公はヒロインを大事に扱わなかった。その間違いがピンチを招いてしまいます。
ヒロインをピンチから救い出す戦いのなかで主人公は自分の間違いに気づきます。ヒロインへの恋心に気づいていなかった。それだけのことかもしれません。恋心に気づいてなかったから雑に扱ってしまった。
気づいていなかったその気持に、主人公は戦いのなかで気づきます。間違いが正されるワケです。
「恋愛の話にはしたくない」そう思う人なら、成長物語みたいな感じにしてもいいです。主人公は子供で、身勝手な行動ばかりしていた。そういう間違いのせいでヒロインのピンチを招いてしまう展開です。子供じみた無責任な行動がクライマックスを巻き起こす原因に。
主人公はヒロインを救う戦いのなかで自分の未熟さに気づき、ひとつ大人になります。
主人公の間違いがどのように正されるのかは少しむずかしい問題なので、今は放っておいてもいいです。とにかく主人公が何かを間違っているせいで問題のシーンが発生したようにしましょう。
ガンマンと対決しないといけなくなった場合なら、主人公はずっと無法者として生きてきて、そのツケがまわってきたみたいな感じでいいです。昔殺したヤツの仲間が復讐に来たとか。
モンスターに逃げ惑うシーンなら、主人公が肝試しをみんなに持ちかけたとかでいいです。森の伝説をナメていたから大変な事態を招いてしまいました。
主人公の間違いを考え出しましょう。そうするこでストーリーに意味が生まれ面白くなります。
小説の書き方で一番のコツを教えましょう。
それは、ストーリーを2枚合わせにすること。オモテ向きのストーリーだけではなく、その裏にもうひとつストーリーを仕込んでおきます。
この2枚合わせにするのがストーリーを面白くする基本です。全然むずかしくはないので、小説をはじめて書く初心者でも取り組めます。さっそくチャレンジしてみましょう。
オモテストーリーというのは名前のとおり表向きのストーリーのことです。主人公には何か目的があって、それに向けて戦いを繰り広げます。
たとえば映画『シュガー・ラッシュ』なら、オモテのストーリーは「悪役ラルフがヒーローメダルを手に入れようとする」というストーリー。主人公であるラルフはゲームの中のキャラクターで、悪役です。悪役だけに誰にも好かれません。そんな役回りに嫌気がさしたラルフは、ヒーローになれるメダルを手に入れるべく別世界で大冒険を繰り広げます。
しかしこれは表面上のストーリーで、実は裏に別のストーリーが潜んでいます。
『シュガー・ラッシュ』の裏ストーリーは、「ヒーローとしてのハートを手に入れる」というストーリー。
ラルフはヒーローになれるメダルを手に入れようと大冒険しますが、その戦いの裏で進行しているのは、ヒーローらしい気持ちを手に入れるストーリーです。
ラルフはみんなに好かれない悪役の自分が嫌でした。そんなラルフが異世界で出会ったのは自分と同じように仲間外れにされている少女。
ラルフはメダルを手に入れるため少女に手を貸します。しかしいつしかラルフは少女を本当に助けたい、守りたいという気持ちになっていきます。
ラルフは悪役なのでヒーローなんかには結局なれません。でもこの少女だけは助けることが出来ました。それだけの物語です。でもラルフはそれでいいと感じます。ヒーローなんかになれなくてもいい。メダルももういらない。少女を助けることが出来たのだから。
この『シュガー・ラッシュ』という映画が大ヒットしたのはこうしたテーマがちゃんと描かれているから。子供にも受けたけど、それ以上に子供を映画館に連れて行った親御さんに受けました。
子を持つ親は当然ヒーローなんかではありません。世界を救えるヒーローなんかにはなれない一般人です。偉くもないし、何が出来るわけでもないオッサン・オバサンです。
でも親は子供だけは救えます。子供は親の献身によって大きく育っていきます。
もうそれだけでいい。『シュガー・ラッシュ』はそういう映画です。子供を育てることぐらいしか出来ない、ヒーローなんかにはなれないお父さんお母さんたちの心にズバッと突き刺さりました。
メダルを手に入れようとする表向きのストーリーの裏には、ハートを手に入れるストーリーが入っています。
もしヒーローメダルの入手を目指して大冒険するだけの話だったとしたら、これほど面白いストーリーにはなりません。
この2つのストーリーの2枚合わせによって『シュガー・ラッシュ』という映画はできています。だから面白いし、感動が生まれます。どちらか片方だけならつまらない脚本にしかなりません。
物語というものは2つのストーリーをより合わせることで面白さが生まれます。小説をはじめて書く初心者もこの2枚合わせをさっそくやってみましょう。
オモテストーリーは表面的なわかりやすい戦いを用意します。「メダルを手に入れたい」みたいなわかりやすい目的が主人公にはあって、わかりやすい大冒険が繰り広げられます。
裏ストーリーの方は主人公の内面の問題を解決するストーリーにします。先ほど2工程目で主人公が何かを間違っている設定を考えたと思いますが、これがそのまま使えます。裏ストーリーは主人公の間違いが正される話にしておけばいいだけ。
悪役ラルフも「メダルをゲットしてヒーローになっちゃおう」という安易な間違った考えを持っていました。そんなラルフも異世界でヴァネロペという少女に出会うことでヒーローらしい気持ちを獲得していきます。
2枚合わせの例を実際にいくつか見てもらった方がわかりやすいでしょう。「ヒロインを助けにいく話」「ガンマンと決闘する話」「森のモンスターの話」それぞれにもオモテストーリーと裏ストーリーの2枚合わせを施し、どのようなストーリーが完成したか載せておきます。
実例を見ればオモテと裏の2枚合わせがどんなものかよくわかるはずです。
【オモテのストーリー】
ヒロインが出会い系を利用してひと儲けを考えている。主人公は用心棒となって分け前を貰おうとする。
【裏ストーリー】
ふたりの間にお金より大事な恋心が芽生えていく。
【間違ってる】
主人公は恋心の芽生えに気づかずヒロインを大事に扱っていなかった。
【書きたいシーン】
クライマックスで主人公はピンチのヒロインを助けに行く。
【オモテのストーリー】
かつては冷酷なガンマンだった。その過去がバレないよう真人間のふりをして暮らす。
【裏ストーリー】
血塗られ過去を断ち切る。
【間違ってる】
過去にたくさん人は殺したが、バレずに静かに暮らせると思っていた。
【書きたいシーン】
復讐に燃える強敵とクライマックスで戦うことに。
【オモテのストーリー】
森の奥にはモンスターが住んでいるという伝説をあばく。
【裏ストーリー】
自分は弱虫だとみんなにバカにされてるのではないのか? みんなに認められたい。
【間違ってる】
モンスターの噂なんてただの伝説だと思っていた。伝説を利用して自分が臆病者でないことを示そうとした。
【書きたいシーン】
姿をあらわしたモンスター。みんな逃げ惑う。
ついでに『シュガー・ラッシュ』も載せておきます。
【オモテのストーリー】
ヒーローになれるメダルを手に入れようとする。
【裏ストーリー】
ヒーローらしいハートを手に入れる。
【間違ってる】
メダルさえゲットすればヒーローになれると思っていた。この目的のため強引に異世界へ。これが大惨事へつながる。
【書きたいシーン】
悪役のラルフが少女を助けようとする。
この3工程でそれっぽい小説が書けてしまいます。
まずはとにかく1本書ききってしまいましょう。はじめて小説を書くのだから上手く書けていなくても気にする必要はありません。
『ヒロインを助けに行く話』をはじめとする3つの作品例ほどには上手くまとまっていないストーリーになるかもしれません。でも最初はそれでいいです。最初から上手に書ける人なんてほとんどいません。
今回紹介した初心者のための小説の書き方は、ストーリー作りの基本をちゃんと押さえたものになっています。中級者や上級者になってもずっと使える大事な基本が詰まっています。
初心者用に基本を少し簡略化した3工程になっています。2作目の小説を書くときは「基本講座」を参考にしながらもっと本格的に進めていってもいいでしょう。基本講座にはこのページよりも少しむずかしい内容が載っていますが、もっとステップアップしていきたい人にとっては絶対に必要となってくる基本を詳しく解説しています。
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