プロットとは話のスジのこと。ストーリーのすじ道を短く要約したものです。スジ(プロット)をさらにもっと短く、荒く大雑把にすると、あらすじになります。
あらすじ ⇒ プロット ⇒ ストーリー
小説などをいきなりぶっつけ本番で書き始める人はあまりいません。多くの人はまずストーリーを要約したプロットを作ってみます。書こうとしている小説や漫画の設計図をまず用意する感じ。
設計図というだけあってストーリーをただ短く要約しただけのものではありません。スジだけではなく重要な設定やアイデアも一緒に書き込んでおくのが普通です。こうした設計図自体もプロットと呼ばれています。
プロットはこの両方を指す言葉になっています。
このページでは設計図の書き方例を詳しく解説していきます。話のスジだけではなく、もう一歩踏み込んで重要項目などもしっかり書き込んでおいた方がいい設計図になります。
プロットは脚本や小説を書くための設計図なので、自分さえ理解できればいいものです。たまったアイデアをわかりやすく並び替えただけの簡素なものでも構いません。
とにかく次の3つさえ書けていたら問題ありません。
・設定
・話のスジ
・重要項目
プロットをわざわざ書いてアイデアを整理しておくのは、この3つを明確にするためです。
思いついたアイデアをノートにごちゃ混ぜにメモしていって終わりでは設計図としては使いにくいです。「設定」についてのアイデアと「話のスジ」つまりストーリー展開についてのアイデアはしっかり分けておきましょう。
「設定」と「話のスジ」のアイデアを分けておくだけでもかなりスッキリ見やすくなります。見やすくなるということは後々使いやすくなるということ。まずはこれだけやっておいてもいいです。
そして重要項目についても分けてメモしておきます。ストーリーを面白くするための重要要素を簡単にまとめておいてください。テーマは何かとか、主人公の目的は何かとか、そういうストーリーにおいて絶対に必要なものですね。
分けて整理しておくと今何が足りていないのかが一発でわかります。
プロットを書いたことがない人には一度実例を見てもらった方がわかりやすいでしょう。見本を下に載せておきます。
「引退したボクサーがボクシング小説を書いて賞を狙う」という物語を作るなら、プロットの書き方は以下のようになります。
設定・話のスジ・重要項目の3つに分割してまとめていることに注目してください。
【起】
引退会見にのぞむ主人公。なぜ早々に引退するのか聞かれ「勝つ姿を見せられないボクサーに存在意義などないからだ」と言い放つ。
引退後、のんびりした暮らしをする主人公。でも退屈で何の張りもない生活に飽きてくる。どうすればいいのだろう。「そうだ。小説を書こう。経験を活かせばいいボクシング小説が書けるはず」
【承前半】
自分と同じように「勝たないと意味がない」と思っているボクサーの小説を書く。無敗で世界チャンピオンになる男のストーリー。自分の叶えられなかった夢を叶えるボクサーの話。
そうやって小説を書き上げた。でもなんだか面白くない。
なぜつまらない小説になってしまうのか、その原因の検討がつかない。仕方がないので取材に行くことにする。
【承後半】
お世話になっていたジムを訪問。取材する。
自分がデビュー戦でKOしたベテラン選手の引退試合も見に行く。弱い選手だったけど意外とたくさんのファンが駆けつけていた。
大怪我をして再起不能と言われた選手の復帰戦も見にいった。負けてしまったけど彼は今の自分にできることを必死にやろうとしていた。
新人王戦のとき1ラウンドで軽く倒した選手も取材させてもらった。もう子供がいて試合も何回か見に来ているらしい。でも毎回負けている。「今度こそ勝つところを見せたい」そう意気込んでいた。
【転結】
主人公はジムの会長に頼まれて天才高校生とエキシビジョンマッチで戦うことに。オリンピックを目指している期待の若手だ。
前座として他の選手の試合もいくつか組まれていた。「子供に勝つところを見せたい」と言っていたあの選手の試合もあった。主人公は会場の後ろの方からその試合を観戦する。彼の奥さんと子供も見に来ていた。でも彼は今回もやっぱり負けてしまった。泣き崩れながらリングを降りるその姿が主人公の胸に刺さる。
主人公はリング上で天才高校生とグラブを交える。彼の強烈なパンチを受けながら主人公はずっと自分の中にくすぶっていたものに気づく。
主人公は小説を書くことをやめて現役復帰のトレーニングをはじめる。もう一度世界タイトルに挑戦するのだ。
オモテのストーリー
ボクシングの小説を書いて賞に応募。
裏ストーリー
引退したあと胸にくすぶっていたものを払拭。
秘めたる想い
勝たないと意味がない。
間違いが正される
勝つことだけにドラマが潜んでいるわけではない。
具体例として載せたこの見本プロットは、ほぼ完成形です。これぐらいまで設計図が整ってきたらいよいよ小説を書き始めます。
この段階に行くまで何回かプロットは書き直されます。最初の頃のプロットはもっとシンプルで文字数も少ないです。見本の半分ほどの量からまずスタートします。そこからどんどん改良を加えてボリュームアップしていく感じ。
最初からこの量・質でいきなり書けたりはしません。何度かの改良が絶対に必要になります。
完成版では話のスジを800文字ほどで書いていますが、初期段階では起承転結すべて合わせても200文字しかなかったりします。起と承しかなくて後半が白紙というケースも。重要項目なんかも初期段階では何も決まっていなくて完全に白紙という場合も。
初期版と完成版では内容自体が大きく変わることも多いです。完成版では引退後の話になっていますが、初期版では現役時代の話を書くつもりだったり。どこかでそれが「引退後のストーリーにした方がいいぞ」と思いつき大幅な手直しが入ります。
手直しが入ることによって使われなくなったボツアイデアが大量に出てきます。今回のプロット例ではボツアイデアまでは書き記していませんが、実際はこの5倍とか10倍ぐらいの量のボツアイデアが発生するのが普通。そうしたものを一応捨てずに、どこかにメモだけでも残しておきましょう。
改良を加えて構想ができあがっていく中で、「秘めたる想い」などの重要項目もどんどん固まっていきます。
↑今回の例ではこの4つの重要項目を記載しました。各重要項目が何を指しているのかわからない人は、基本講座の該当記事を読んでください。
関連記事:オモテと裏
2枚合わせにすればストーリーは面白くなる
関連記事:秘めたる想い
主人公の設定で一番大事なのは秘めたる想い
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いい主人公の条件はドラマを生み出すタネを持っていること
見本プロットでは重要項目を4つだけに絞って書きましたが、初心者ならもっと基本的な要素も書き加えておいた方がいいでしょう。主人公の動機とか、勝利条件とか。さらには感情移入の入り方とか。
慣れている人なら「オモテのストーリー」という項目を書いておけばなんとなく勝利条件もつかめます。でも初心者の人は何が勝利条件なのかも具体的に書いておいた方がいいです。「勝利条件:面白いボクシング小説が書けてちゃんと賞を獲れたら、めでたしめでたし」みたいな感じで。
慣れていない人は、自分が重要だと感じる要素は全部思いつくだけ書いておきましょう。10項目でも20項目でも。いざ小説を書いていく段階になったときに、書きやすさが全然違ってきます。
どんな項目が重要なのか検討がつかない人は、まずストーリーの基本を勉強しましょう。
面白いストーリーを作るための基本講座も当サイトに設けています。本格的に学びたい人はをのぞいてみてください。
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