小説を書いて新人賞に応募するときよくある疑問が「完結している小説を送ってね」という応募規定。完結とはなに?
ライトノベルなどは全10巻とか20巻になるような大長編作品が普通です。ならば第1巻にあたる部分を書いて送っておけばいいのではないか。話はまだ第2巻以降へ続いていくけど、これで応募してもいいんだよね? それともダメなの?
ラノベ作家志望の人は必ず悩む問題だと思います。でもこれはダメです。完結バージョンの第1巻を送らないといけません。
普通の「第1巻」と「完結バージョンの第1巻」このふたつの何が違うのかといえば、主人公の目標です。ここを修正できたら完結した小説にちゃんとなります。
「応募要項には完結した小説を送れと書いてある。でも第1巻にあたる部分だけを送っておけばいいんだよね? ダメなの?」そう悩む人はほぼ間違いなくライトノベルを書いている人だと思うので、このページはラノベ応募のケースに絞って解説していきます。
ラノベだろうと何だろうと、新人賞に送る小説は完結した作品であることが絶対条件です。その理由は、ストーリーを完結させられない人は基本が全然身についていない可能性が大だから。ストーリーを作る力がおそらくありません。
だから出版社は完結していない作品は評価しません。10ページにまとめろと言っているならともかく、10万文字とか15万文字でまとめてねと言っています。これぐらい出来なくてどうするんだという話です。
才能のある人や基本をしっかり勉強した人なら、この条件で簡単に完結バージョンを書くことが出来ます。
では完結したバージョンとはいったい何か? 完結したストーリーとは何か?
それは主人公の目的が達成したストーリーのことです。悪の大魔王を倒すという目標が主人公にあるなら、その魔王を倒さないとストーリーは完結しません。「魔王はラスボスなので第20巻で倒します。第1巻はまだ異世界に転生してあたふたしているだけのパートです」みたいになってしまいますが、これではダメ。主人公の目標は必ず応募作内で達成させましょう。
そのためにみんながやっていることは、魔王を第1巻で倒すのではなく、目標自体を変更すること。第1巻の中で達成できそうな目標に変えてしまいます。魔王を倒すという目標は第2巻以降で出てくるようにして、第1巻ではもっと身近な目標を用意します。
これでちゃんと完結した小説になります。
ストーリーを作る初歩的な実力は、これが出来るかどうかでほぼ測れてしまいます。基本が出来ていない人は完結バージョンを作れません。
「完結したストーリーとはつまり何?」この疑問を理解するには、織田信長を例に考えてみるのが一番わかりやすいです。
織田信長は最後本能寺の変で死んでしまいます。しかしこの死に際まで書かないと小説が完結しないかと言うと、違います。今川義元が大軍で攻め込んでくる桶狭間の戦いだけでも完結したストーリーは作れます。
「本能寺の変まできっちり書かないと完結した小説とは認めないぞ」そう感じる人はいません。最初の桶狭間の戦いだけを描いた映画があったとしてもみんな楽しんでくれます。
なぜ桶狭間の戦いだけでストーリーが完結するのかというと、目標がそのことだけに絞られているからです。まだ天下統一など織田信長は考えていません。鉄砲を大量購入することもまだ考えていないし、楽市楽座などもまだまだ先の話。
織田信長は今川義元の進行を食い止めることにすべてを懸けています。これがストーリーの目標になっているからこそ桶狭間の戦いだけでストーリーはちゃんと完結します。
もしこの時点で天下統一まで考えていたら、本能寺の変まで書かないと完結しないことになります。それなのに天下統一へまだ道半ばの小説が送られてきたら、出版社は「完結していない小説を送って来やがった」と感じて落選させます。
焦点の問題です。そのストーリーで何を扱うのか。何の話なのか。
ラノベの新人賞に応募するときも、完結させるためにやることは織田信長のケースと同じです。ラスボスを倒すところまで書く必要はありません。自分の書こうとしている作品が全20巻に及ぶ大作なら、その作品の全体像は織田信長の全生涯にあたります。応募作として書いて送るべきは最初の桶狭間の戦いの部分だけ。
一番重要となってくるのは目標の設定です。主人公にどんな目標を持たせるのか。
応募作内でクリアできる目標を設定して、その話を描いていけばいいんです。
たとえば異世界転生した主人公が戦士と出会い、彼を仲間にしていずれは魔王打倒を目指すとします。第2巻ではさらにヒロインとも出会い、仲間に加わります。3巻では太ったヤツも仲間に合流。こういう展開で全20巻に及ぶ大冒険が繰り広げられます。
しかしヒロインや太ったヤツの話は応募作である第1巻には出しません。魔王打倒の話も出しません。最初に仲間になる戦士の話だけで完結させます。
異世界に転生した主人公は最初ピンチに遭遇します。それを戦士に助けてもらい、お礼として彼の悩みを解決してあげる。応募作はそんな感じで戦士の話だけに内容を絞ります。
戦士は悪者に父を殺され復讐を誓っている。主人公はそのかたき討ちを手伝ってあげる。
戦士には離れ離れになった奥さんがいる。主人公は彼女を探し出し連れてきてあげる。
敵が攻めて来るのに戦士は自分の弟と仲が悪い。兄弟を仲直りさせないと侵攻は食い止められない。
こんな感じでどんなパターンでもいいです。とにかく第1巻で収まる目標を設定して、その話だけで1本書いてしまいます。いわば桶狭間方式です。
室町幕府を倒すとか、後々豊臣秀吉となる足軽が頭角をあらわしてくることなどは、第2巻以降に先送り。主人公は第1巻では攻めてくる今川義元のことだけを考えるようにします。そうすれば読者も桶狭間の戦いだけに集中してくれます。今川義元さえやっつければストーリーは完結します。
書いた小説がどうも完結してないように感じるときは、第1巻に入れようと思っていたアイデアをどんどん第2巻以降へ移動させましょう。応募作は応募作専用の桶狭間的なストーリーに仕上げます。
「この応募作内では回収されないけど、いい伏線がある。張る部分だけ応募作に入れておいてもいいのかな?」などと悩んだりする人もいます。でもこうしたものは入れてはいけません。応募作品内で回収される伏線のみで勝負します。
回収されないけどストーリーが面白くなりそうな伏線があるなら、入選して出版が決まったときに付け足せばいいです。受賞したらどうせ書き直しをさせられます。そのとき「こういう伏線があるんだけど」と編集者に相談してみましょう。その伏線が本当に効果的ならそのときGOサインが出るはず。
完結している小説とは桶狭間方式の小説のことです。桶狭間の戦いに関係ないものはいっさい入れないようにしましょう。
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