面白いストーリーの作り方

【小説の視点の種類】一人称と三人称の違いは?どっちがオススメ?

目次
視点の種類

「小説の視点は一人称がいいのか。それとも三人称がいいのか」

初心者が必ず悩む問題です。

視点は主人公の重要度によって決めます。人間をしっかり描きたいなら一人称。起こる事件の方をしっかり書きたいなら三人称を選びます。

初心者におすすめなのは「三人称一元視点」です。理由は一番失敗がないベーシックな視点だから。

他の視点はなぜ失敗しやすいのか? さらには一人称と三人称の違いや、他にどんな種類の視点があるのかなど、順番にわかりやすく解説していきます。

小説の視点の種類

小説の視点は4種類あります。

一人称 「わたしは森の奥へ進んだ」
三人称一元視点 「太郎は森の奥へ進んだ」
三人称 「太郎は~」
「花子は~」
「吉田は~」
神視点 「太郎と花子と吉田は森の奥へ進んだ。この先に待ち受ける困難も知らずに」

「一人称」と「三人称一元視点」は単独視点です。主人公から見た世界だけを書いていきます。

「三人称」と「神視点」は複数視点。主人公だけでなく他のキャラクターにも視点を担当する機会を与えて、複数の目でストーリーを描いていきます。

それぞれの特徴、例文、メリット・デメリットなどを順番に見ていきましょう。

 

一人称は「ボクは・私は」の独り言スタイル

一人称は主人公が独り言を喋っているような感じになります。自分で状況を説明して、自分の気持ちなども自分でベラベラ解説して。

ボクは右へ進むのが正しいと感じた。理由はわからないけどね。でもそう感じたんだ。

分かれ道でボクは右を選び、森の奥へ進んだ。

こんな感じで独り言を観客に向かって喋りつづけます。「ボクは」「わたしは」という言い方になります。

単独視点なので主人公の見たこと感じたことだけを書いていきます。

主人公が知っていることなら自由になんでも喋れてしまいますが、でも書きすぎる失敗も非常に多かったりします。つい主人公の気持ちや状況をベラベラ説明しすぎてしまいます。

本当はヒロインに対する気持ちなどちゃんと描写した方がいい場合でも、一人称ではつい簡単に説明させてしまいます。「ボクは花子が好きだ。一度デートしたい」みたいに気持ちを全部書いてしまったりします。

一人称は書きやすいけど、つい説明しすぎてしまう厄介な視点でもあります。

「三人称一元視点」は一人称の置き換えタイプ

一人称と似たものに「三人称一元視点」があります。名前だけ見れば三人称の仲間みたいに思えますが、実際は一人称から派生したスタイル。「ボクは」を「太郎は」に言い換えるだけの書き方です。

なぜかそのとき太郎は右へ進むのが正しいと感じた。理由はわからない。でもそう感じた。

太郎は右を選び、森の奥へ進んだ。

一人称とほとんど同じです。独りごと感を消しただけ。主人公が観客に向かって話しているのではなく、主人公の心に直接アクセスしている感じになります。

「ボクは」を「太郎は」に置き換えるだけです。しかしとくに意識しなくてもベラベラ説明するのを自然と抑制する書き方になります。「太郎は」という3人称表記にするだけで、読者に向けて話したり訴えかけたりしているわけではない感じになります。そのため、よけいな事をベラベラ説明してしまうのは変に思えてきます。

だからとくに意識しなくても説明過多を防止。主人公の気持ちなどを説明しすぎる失敗をかなり防いでくれます。

この「三人称一元視点」も単独視点なので、気をつけないといけないポイントは一人称と同じです。主人公の知らないことは一切書けません。脇役キャラ同士がふたりだけで会話しているようなシーンは書けません。主人公がそこにいないから。

視点を主人公だけに固定するメリットは主人公との一体感や臨場感です。しかし一度でも主人公のいないシーンを書いてしまうとこのメリットが崩壊します。一回壊れたものは二度と元には戻りません。主人公との一体感が弱まったままストーリーの最後までいってしまうことに。

主人公の知らないことは絶対に書かない。主人公の見たこと感じたことだけを書く。これさえ気をつけておけば「一人称」や「三人称一元視点」みたいな単独視点は読者との強い一体感を生み出してくれます。

視点をどれにするか初心者が迷ったときは、この三人称一元視点が一番おすすめできます。書きやすいし、しかも説明しすぎる失敗も抑えられる万能タイプ。

三人称は脇役も視点を担当

三人称は複数視点方式です。主人公だけでなく脇役の視点にも切り替わり、いろんなキャラクターが視点を担当していきます。

つまり、主人公の知らないことも書けてしまうということ。この点が一人称や三人称一元視点といった単独視点との一番の違いです。

太郎は右を選び、森の奥へ進んだ。


花子は遅れたことを後悔しながら分かれ道までやってきた。道はここで右と左へ分かれている。花子は2つの道に注意深く目をやり、太郎がどちらへ進んだのか考えてみた。


吉田は分かれ道に来ると足の出血具合を確認した。足の怪我のせいでふたりからずいぶん遅れてしまった。

太郎と花子はどっちへ行ったのだろう。左ではないだろうか。そんな気がする。吉田は左へ進むことに決めた。

このように三人称では主人公である太郎以外の登場人物にも視点を切り替え、脇役の物語も描いていきます。

群像劇のようないろんな登場人物の話を描くストーリーに合います。

長期連載小説の場合も長大な物語なだけに自然と三人称になります。主人公の話だけで長い小説を書くのは無理があるので、三人称を用いていろいろなキャラクターのドラマを描いていきます。

このように三人称という視点は、主人公をあまり重要視しない書き方になります。事件をしっかり描きたい小説で力を発揮します。主人公にこだわらず広範囲にストーリーを広げていけます。

一方でデメリットも多いのが三人称。主人公の知らない所でストーリーが進むため、感情移入や臨場感が損なわれるという欠点があります。脇役の視点で主人公を観察するようなシーンまで書けてしまいます。そのため三人称という視点は主人公がどうしても弱まってしまうスタイル。

さらには視点を別のキャラクターに切り替えるタイミングも計算しないといけないし、視点を頻繁に移動させすぎると読者に混乱だって与えかねません。感情移入の入り方を考えず視点をあちこち切り替えていると面白さ自体を壊す可能性もあります。

本当は隠しておいた方が面白くなる情報だっていくらでも書けるから、三人称ではついよけいなことを書いてしまいます。「吉田は太郎が嫌いだった」みたいに。吉田の態度からなんとなく太郎が感じ取る方が面白くなりそうな場合でも、つい何でも説明してしまいます。

とくに敵の悪者は謎めいた雰囲気にしておいた方がいい場合が多いのに、その敵の悪者にも視点が切り替わって考えていることや意図を全部説明してしまいます。

いろんな登場人物の心理が書けたり、主人公のいないシーンも書けたり、たくさんのメリットもある三人称。しかしあちこちに失敗要因が潜んでいる難しい視点でもあります。

神視点は作者が介入してきてしまうスタイル

神視点は三人称とほぼ同じものです。三人称に作者の喋りが加わった感じ。作者がストーリーに口出しをしてきます。

主人公どころか登場人物全員が知らないようなことも書けてしまいます。

太郎は右を選び、森の奥へ進んだ。その先にはモンスターが待ち受けているとも知らずに。


少し遅れてひとりの女性が分かれ道にやってきた。彼女の名前は花子。太郎の恋人だ。花子は左を選んだ。太郎とは違う方角だ。しかし左は安全だ。


吉田も分かれ道にやってきた。吉田はあたりに目をやり、結局左へ進んだ。犠牲者は太郎ひとりだけで済んだようだ。

このように作者が読者へ向かってベラベラしゃべる感じになります。

いろんな説明を作者自身が出来てしまうというメリットはあります。展開に対する作者の感想も入れられるのでゲームの実況放送のような楽しさだってあります。

しかし作者がしゃしゃり出てきているため緊張感がなくなります。せっかくのストーリーが作り物っぽい感じに。

神視点は書いているときは楽しいけど、作り話っぽさがどうしても出てしまう使いにくい視点です。

視点の決め方・使い分け方

視点にはそれぞれメリット・デメリットがあります。特徴をちゃんと理解して使い分けていきましょう。

使い分けの基準として一番考慮しないといけないのは単独視点か複数視点かということ。

単独視点

・一人称
・三人称一元視点

複数視点

・三人称
・神視点

主人公だけが視点を担当するのか、それともいろんな登場人物にやらせるのか。一人称か三人称かで悩んでいる人は多いけど、結局はみんな単独視点でいくか複数視点でいくかで悩んでいます。

視点を選ぶときに一番大事な基準となるのは、主人公をどれぐらい重要視するのかという点

一般的な小説は主人公の身に起きたドラマチックな出来事を描いていきます。だから主人公は絶対。当然ながら単独視点で書いた方が得られるメリットは大きいです。

しかし推理小説のように殺人事件の謎とそのどんでん返しが面白さのメインとなるようなものなら、主人公はあまり重要ではありません。そのため三人称で書いた方が多くのメリットを享受できます。

視点の種類を決めるときは自分が何を書こうとしているのかで決めましょう。自分が次のどちらの作品を書こうとしているのかを考えてみてください。

このページで例文としてずっと使ってきた「森の奥に進む話」ですが、太郎という主人公の青春物語にもなるし、森に潜む怪物の話にもなります。

太郎の青春物語を書こうとしているなら一人称、つまり単独視点が合います。

「そうじゃなくて森に住むモンスターの恐怖を書きたいんだ! 太郎なんてどうでもいい」そういう人なら複数視点が合います。主人公のドラマを書こうとは思っていませんからね。それぞれの登場人物が分かれ道でどっちを選択するかとか、モンスターに襲われる恐怖などがメインコンテンツです。太郎という主人公は一応出てくるけど、実際のメインはモンスターの方です。

推理小説で三人称の複数視点がよく使われている理由も同じです。推理小説は謎とどんでん返しがメインコンテンツです。主人公はオマケ。

町に巨大な竜巻が襲ってくるパニック小説なんかが書きたい場合も、三人称が合います。主人公は一応出てくる程度で重要ではありません。

視点を主人公だけに固定すると読者との強い一体感が出ます。これを得たいなら単独視点で。しかし主人公の知らないことは書けないというデメリットがあります。

事件に翻弄されるいろんな登場人物の様子を描きたいなら複数視点で。しかし主人公が弱まるという大きなデメリットもあります。

自分がどちらのメリットを得たいかで視点を決定しましょう。

一般的にはやはり単独視点の方が多く選ばれています。主人公との一体感はかなり大きなメリットですからね。複数視点は推理小説やSFなど主人公をあまり重要視しない小説で利用されています。

 

関連記事小説の一人称視点や三人称のタブー!よくやるブレや混在の失敗

 

Home >> よくある質問 >> 【小説の視点の種類】一人称と三人称の違いは?どっちがオススメ?

 

メニュー

面白いとは

テーマ

主人公の作り方

ストーリー設定

起承転結

各シーンの作り方

ストーリーの結末

修正ポイント

物語を作る才能

応用編

その他

よくある質問 | 映画の解説動画 | プロフィール | 自作小説