「起承転結の承とは何?」
小説や物語作りでよくある質問です。答えは単純。起承転結の「承」とは、主人公の間違いを描いていくパートです。
結局のところ物語とは「間違いが正される話」のこと。この基本原則をちゃんと学んでいれば起承転結はすぐに理解できます。承に何を書けばいいのかわからない人は、構成をちゃんと勉強していないだけ。
承の意味については多くの人がつまづいている部分です。きちんと学ぶことができた人はライバルに大きな差をつけられるチャンス!
「起」はわかる。「転」や「結」もわかる。
でも「承」の意味がわからない。承って何?
こういう人は非常に多いです。「起」は物語が始まるパートではないだろうか。「転」や「結」は山場とかエンディングではないか。「じゃあ承は・・・」
みんな承がわからず挫折します。
入門書を買って読んでも「起を受けて話が進んでいくパートです」などと書かれていて、承で結局なにを書けばいいのか謎が深まるばかり。
承は「物語とは何か」という問題に直結しています。ストーリー作りの基本がわかっていないと承は理解できません。
物語・ストーリーというのは、主人公が何かを間違っている状態からスタートします。戦いの中でそれが正されます。物語とは結局のところ「間違いが正される話」のことです。
たとえば白人の刑事が黒人の刑事と一緒に事件の解決に立ち向かう映画なんかがありますよね。こうした映画の場合でも、ストーリーが始まった当初主人公は何かを間違えていないといけません。
殺人事件が起きた。主人公である白人刑事は黒人の刑事と組んで事件を捜査することに。
しかし主人公は黒人が気に入らないこともあり、お互い対立し合う。ふたりは衝突し捜査に暗雲が垂れ込める。
こんな感じで最初ふたりは対立します。主人公は人種的な偏見にとらわれていて、白人だけが偉いと思っています。そのため黒人刑事なんかと一緒に捜査などしたくないと思っています。
この間違っている姿を描いていくパートが起承転結の「承」です。
間違っている姿を描いておかないとストーリーが成立しなくなります。最初反発し合っていたふたりが捜査を通して心を通わせていきます。主人公も最初は差別的な目でパートナーを見ていたけど、やがてその間違いに気づきます。
クライマックスでは黒人刑事を助けるため命を懸けて敵地へ乗り込んでいったりします。
物語とは間違いが正される話のことです。だから承でしっかり主人公の間違いを見せておかないといけません。
もし白人刑事と黒人刑事が仲良しで、お互い尊敬し合っていたらどうか。そんなふたりが最初からお互いの気持ちを尊重し合いながら事件を捜査。
お互い信頼関係で結ばれているので捜査はスムーズに進み、難なく事件解決。めでたしめでたし。
そんな映画が果たして面白いでしょうか?
主人公は必ず何かを間違っていないといけません。そのせいで大苦戦しますが、戦いの中でそれが正され最後は勝利を勝ち取ります。
それが物語というものです。
例として取り上げている刑事の話を実際に起承転結に分けてみましょう。こんな感じの4幕構成になります。
全体の中で承がどのような働きをしているのかを確認してみてください。
【起】
殺人事件が発生。主人公は黒人刑事と組むよう命令され、ふたりで事件解決を目指すことに。
【承前半】
ふたりは反発し合い捜査がスムーズに進まない。
【承後半】
大喧嘩をきっかけに主人公は「自分の考えは片寄っているのでは」と思うようになり、少しずつ相棒を認めはじめる。
【転結】
黒人刑事を助けるため敵地へ。
1. まず事件が発生して物語が立ち上がります。
2. 主人公の戦いが始まります。しかし主人公は間違っているので大苦戦。
3. ストーリーの後半になると主人公は自分の間違いに少しずつ気づきはじめます。
4. そしてついに最終決戦へ。
ストーリーの中盤でしっかりと描いておかないといけないものは、主人公と黒人刑事の対立です。承の役割はこれ。
別の例も見てみましょう。主人公が昔の恋人と偶然再会して、よりを戻して、でも結局別れる。そういうラブストーリーの場合でも承の役割は主人公の間違っている姿を描くことです。
【起】
街中で昔の恋人と偶然再会。よりを戻すことに。
【承前半】
主人公は自分たちが以前破局したその理由に気づいてない。ちょっとしたすれ違いで別れることになっただけだと思っている。よりを戻したあともただ浮かれているだけ。
【承後半】
主人公はやっとふたりの意識のズレに気づきはじめる。別れのときが来ることを予感しながら付き合いつづける。
【転結】
恋が終わる。ふたたび別々の道へ。
起承転結という構成がわかるようになればストーリーを作る力は大幅にアップします。それぞれのパートの役割をこの機会にしっかり学んでおきましょう。
当サイトの基本講座でも起承転結についてはページ数を割いてかなり詳しく解説しています。参考にしてください。
関連記事:
面白いストーリーは起承転結の4幕構成になっている
メニュー